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【日本代表】 日本№1ポストプレーヤー興梠慎三 チームのために得点を生む最高の術 【浦和レッズ】

2015/07/23 22:10配信

飯守 友子 (CHANT編集部)

カテゴリ:コラム


ついに興梠慎三が日本代表として大会に出場する。

7月23日、ハリル・ホジッチ監督は東アジアカップに挑む日本代表23名を発表した。
東アジアカップは国際Aマッチではないため、海外組の招集ができず国内組の選手たちを中心に選出。
現在国内で強さを誇る浦和レッズから5名、昨年圧倒的な強さを誇ったガンバ大阪から6名、昨季から個人能力が注目され今季はチームとしてもファーストステージ2位と結果を示したFC東京から4名と
クラブとしても結果を残している場所からの選手の選出が多い印象だ。

その中でも注目したいのは、4年ぶりの招集となった興梠慎三だ。
個人的には日本№1ポストプレーヤーだと思っている。
興梠慎三がついに日本代表で起用されることになりそうだ。

●興梠慎三の特性

興梠は日本代表に4年ぶりに選出されたが、4年前よりも明らかに力も経験も身に付けた。
鹿島時代ではポスト役としては物足りないと言われがちだったが、今の興梠は違う。

身体は大きくはないが、得点能力に優れているだけでなく、とにかくポストプレーヤーとしての能力が高いのだ。

日本でポストというと大きな選手がボールを当てて落とすという間違った印象を持った人が多いかもしれないが、ポストプレーヤーは当てて落とすことが仕事ではない。
最前線で攻撃の可能性を拡げる役割をする選手のことだ。

興梠は、攻撃の最前線でタメを生み出すことができる選手である。

ボールが興梠に入ると、ワンタッチで叩くこともできるが、ディフェンダーを背負っている状態であってもタメを作ることができ、ボールを出すべき味方選手に付いているディフェンダーのタイミングをずらすことができる。
ワンタッチでボールを出すと相手ディフェンダーに阻止されてしまうボールであっても、自分がタメを作ることでディフェンダーが味方に付いているそのタイミングをずらすことができ、注目を自分に向けることで空くスペースを生むこともできる。

ボールを受ける場所と状況によって自分がどういったプレーをすることで、どんな可能性を生めるか。
どう相手を欺き、味方をラクにさせるか。
それを瞬時に判断することができるFWなのだ。

自分だけが得点できれば良い、自分が得点したい!というFWではなく
チームのために誰が得点しても良い、とにかくチームとして得点を重ねることができる術を 生み出すことができるのだ。
それが興梠慎三という選手の特性だ。

FWにはさまざまなタイプが存在するが、興梠は高い位置で起点になることを得意とする。
高い位置で起点となれることで、相手のディフェンスラインを下げることができ、味方を生かす選択肢を持っていること、そして自分でも獲りに行ける。そして味方にも獲りに行かせることができるのだ。

現在浦和レッズは興梠慎三の他に、現在ブレイク中の武藤雄樹が目立った得点を重ねているが
武藤は興梠とタイプが当然のことながら違う。
現在1トップの位置に興梠が入っているのにはワケがある。
興梠がポスト役として起点を作ることができるため、その裏や興梠が生むスペースに走りこむことができる選手。
それが武藤なのだ。

武藤は逆に人を使い起点になれるタイプの選手ではなく、裏から飛び出したり、弾かれたところに詰めることができるタイプのFWだ。
このお互いの特性が現在噛みあっていることで、浦和レッズは多くのチャンスからゴールを生み出すことができている。


●鹿島で培ったFWとしての教えと身近な目標

興梠慎三をタイプ的に分類すると、ある選手を思い出すことができる。
起点の作れるバランスの良い、味方にもゴールを生み出すことのできるFW…として思い出される人物。

そう、柳沢敦だ。

鹿島でのプレーはもちろん、日韓W杯などの活躍を見てもわかるように、柳沢敦(現鹿島アントラーズ・コーチ)のプレーは高い位置で起点を作ることができ、自分そして味方に得点を生み出すことができるFWだった。
興梠は鹿島で柳沢と過ごした時間は短いものの、日本を代表するFWとしてお手本にし、そこから学び、吸収したことであろう。
今では当時の柳沢以上にバランスの良い質を持ったポスト役へと成長した。

FWとしてディフェンダーとの距離や位置を瞬時に判断することができるその能力は、鹿島の層の厚い中で揉まれながら経験として積み重ねたものであろう。
タイトルを獲るためには必要だった一枚上での判断能力だったはずだ。
さらに浦和に移籍してからは、その起用方法により、さらにポストプレーヤーとして開花した。

今では日本で一番ポスト能力の高い選手として、そして頭脳系FWとして、誰もが相手にするのが嫌なFWへと進化した。

●ハリルが聞きたいといった 怪我が多い理由

ハリル・ホジッチ監督の恒例となった日本代表発表の濃厚会見。
一人一人の選出理由を口にするところは熱い且つ、真面目なハリル・ホジッチ監督を表している。

そこで興梠についてこんな言葉を口にした。

怪我が多いのはなぜかとディスカッションしたい。

これは前回、ハリル・ホジッチ監督が興梠を招集した際、興梠が負傷を抱え代表を辞退したことも含めてのことだ。
昨年はアギーレ監督が代表にリストアップしていたところで骨折。そして3月のハリルJAPAN招集も直前に痛めたことにより辞退せざるを得なかった。

試合中に鼻を強打することや顔面を強打すること、何度も足を痛める姿。
これはおそらく興梠自身に問題があるのではない。
それだけ相手のマークが、厳しいのだ。

どの対戦相手であっても一番の警戒は、興梠慎三であることは間違いないであろう。
浦和レッズは多種多様な攻撃パターンとおそれるべきポイントを多く持っているが、どのクラブであっても一番やられたくないのは高い位置で起点を作られることなのだ。
高い位置で起点を作られることでディフェンスラインが下がってしまい、より自陣のゴールに近いところでボールを回されてしまう。
さらに興梠のタメのプレーによって武藤が飛び出してくるスペースを作られてしまうため、興梠慎三を自由にするわけにはいかないと考えるのが主となる。

そのため、常に厳しいマークを興梠は背負うことになる。
時にはファールをしてでも止めなければ、ファールでしか止められないということも生じてしまうため、興梠は何度も身体を痛める。
代表辞退はあったものの、昨年の骨折は長期離脱となったが、長びく負傷で戦列を離れることはチームの迷惑になると興梠が一番嫌がることでもある。
多少痛くてもプレーは続ける。いつも傷ついているように見えるほどにマークは厳しく、痛みの生じるプレーが連発するがそれでもピッチに立ち続けることを選択している。

興梠慎三は強いのだ。

●ハリルサッカーでの興梠慎三はどのような起用となるか

浦和のサッカーは速いパスの本数が多く、ポゼッションをしながら攻撃を仕掛けるサッカーなのに対し、ハリル・ホジッチ監督のサッカーは縦に速いサッカーを展開する。
そのため、興梠慎三が日本代表にどのように起用されるか気になるところだが、興梠慎三は非常に頭の良いFWだ。

ハリルJAPANに必要なことは、縦に速いサッカーを表現するに必要な「判断力」だ。
ダイレクトで長いボールを使いたいサッカーを展開するため、動き出しが重要となる。
ボールが出てくるときにはもう動き出していることが求められ尚且つ、相手の位置や動きの読みも考慮しての動き出しが求められることになる。

興梠慎三は非常に器用なタイプであり、なんでもそつなくこなせるバランスの良いFWでもあることから、順応性を持って日本代表のサッカーに入ることができるのではないであろうか。

そしてもうひとつの興梠慎三の特性に注目したい。
それは、クリアボールのようなどっちつかずのボールを物にすることができるところだ。

クリアボールなどのどちらが繋げているわけでもないボールを興梠は受け、その状況により処理することができるのだ。
例えば相手の攻撃が続いているときにセカンドボールを獲られて再び攻撃されることは波状攻撃を受けることに繋がる。
それを避けるために、どっちつかずのボールを受けにいき処理し、ファールを誘うような動きをする。
ファールになったことで相手のボールにすることなくマイボールにすることで、相手の攻撃の波を止めることができ、自陣で一度ボールを落ち着かせることができる。

逆に自分たちが波状攻撃を仕掛けている際は、セカンドボールを受けタメを作り味方の選手を使うことや、スピードで処理しワンタッチで味方に配球することもできる。
もちろんそこれでもファールを誘い、速くリスタートをかけ波状攻撃のスピードを落とさず仕掛けることもできるのだ。
そして自らも当然ゴールへ向かい高いシュート能力でゴールを奪う術も持っているのだ。

東アジア限定といえども、その器用さと献身的なプレーがどこまで代表という舞台で表現することができるのか注目だ。

ハリル・ホジッチ監督は献身的なプレーを求めていると常に口にする。
ドリブルが得意、シュートが得意といったFWは宇佐美他、存在するが
献身的かつバランスが良く器用であり、高い位置で起点となれる選手は興梠が今は一番能力が高いであろう。
タイプの違うFWとの融合が今大会では一番の注目どころとなる。
武藤との息はピッタリであろうが、その他のFWやサイドハーフの選手との兼ね合いも非情に興味深い。


王者と呼ばれた時代を築いた鹿島アントラーズの一時代を経験し
プロとしての意識高くプロの中のプロ集団である浦和レッズで鹿島での経験を土台にし、さらに成長を続けている興梠慎三の「今」。

蒼いユニフォームを着て、日本を代表する姿を観ることができる時が来た―。

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