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FC東京 高橋秀人の目指すべきもの

2015/01/16 16:54配信

武蔵

カテゴリ:コラム

ファンにとっては、短いようで長かった移籍報道に決着が付きました。

2014年12月18日、FC東京の地元紙と言える東京中日スポーツでデカデカと取り上げられたのは「浦和 東京高橋獲り」という記事でした。

条件としては、東京よりも良いものが提示された大型契約でした。

2015年シーズンまで残る契約の延長交渉の流れで出た話と思われ、その契約を買い取る形での違約金も支払うという文章が、

ここ最近はゼロ円移籍でしか選手を獲得していない浦和の本気度を示すものとして、恰好の火種となったことでしょう。

しかし私は、彼が少なくともこのタイミングで東京を離れるとは思いませんでした。

従って、それほど心を騒がせるようなニュースではなかったと言えます。

さすがに年俸7000万円の3年契約+違約金と聞いた時にはビックリしましたしオファーの相手が浦和ということで

「理想は阿部勇樹さん」

と言って憚らない高橋のことと合わせて、少し不安になりましたが、同じエージェントの加賀健一の浦和移籍が発表されると

もう東京残留で固まったな、と土曜日の自身の挙式を挟んで発表されるだろう、とそう思うようになりました。

ほどなくして、スポーツ報知で「残留」が確定したとの報道が出てやはりなと思ったワケです。

入団の経緯や高橋自身の性格、また、サッカーの志向を考えると移籍自体もそうですが、少なくとも浦和への移籍は無いと言えました。

入団の決め手「味スタ」「ブルーノ・クアドロス」

「味の素スタジアムの雰囲気が好きで、僕はFC東京への入団を決めたんです。」

そう語ったのは、露出の増えた日本代表選出以降に受けたインタビューでした。

その味の素スタジアムが歓喜の極みで揺れるという夢を実現するまでは、

ここ以外を本拠地とするチームへ移籍することはありえないのではないでしょうか。

また、入団の際に「絶対に着けたい」と志願した背番号4

これは前年まで着けていた、ブルーノ・クアドロスへの尊敬がその自己主張を引き起こしたものです。

ブルーノに追い付き、追い越すためには、まだ達成していない目標というものが残っています。

至って真面目な性格、自身のミスで敗れた一戦のあとは涙を流すなどプロフェッショナルとしては優しすぎるほどの生真面目さを持つ彼が、

目標を残したまま移籍するということは考えられませんでした。

高橋秀人の2014年と2015年

サッカーの志向も真面目な、一種のオタク的な求道者という一面があります。

「ゾーンの申し子」と言われるほど、ゾーン・ディフェンスには実践、理論共に定評のある高橋ですが、

それを一番生かせるのは間違いなく現在のFC東京でしょう。

マッシモ・フィッカデンティ監督の推し進めるゾーン・ディフェンスの一番の体現者として、

FC東京の14戦負け無しを支えた実績からも、そう言えます。

シーズン序盤は周りとの距離感が噛み合わず、チームが上手くいかないあまり、

せめて特徴でもあるコンタクトの強さを生かそうとして、しばしば

スペースを空けてしまい、失点の原因となったばかりか、味方の、特に

DFの森重真人の序盤でのイエローカードの累積による出場停止の一因となってしまいました。

また、その流れで2年目の野澤英之にポジションを明け渡すこともありました。

しかし、その野澤が試合中のアクシデントでケガをし、その代わりとしてピッチに送り込まれて以来、

遂に、出場停止以外でポジションを明け渡すことはありませんでした。

その後、リーグ中盤の堅守の中心となった事は言うまでもありません。

2014年はサッカー選手として進化しましました。

これを2015年も継続していくことが、何よりサッカー選手として進化していくために必要なことではないでしょうか。

浦和ではダメな理由は既に言及していた

「浦和からオファーが来た際、すぐに断ろうと思った」と言ったと報じられていますが、彼のサッカー志向を考えると、

さもありなんといったところです。

つまりこれからの高橋のテーマは、より効果的な守備の追求です。

サッカー批評でのインタビューでもありましたが、ゾーン・ディフェンスだけではダメで、相手の個人技のレベルによっては距離を埋める、

人に付くということも必要だと話しており、かといってありがちな気持ち守備ではなく、

あくまでゾーン・ディフェンスにとって最重要なボールマーキングの部分を大前提として、

あとは試合の中でケースバイケース的にアジャストしていこうというものです。

要はその2つの中で、より良いバランスを探していこうというものです。

ここで浦和へと目を向ければ、リスクの大きいサッカーをしています。

攻撃に人数をかけるあまり、後代にスペースを空けてしまうきらいがあります。

そこのカバーリングを完璧に行うのは、人の手では追い付くものではありません。

そこにあるのは気持ち。守備です。

つまり、高橋の志向と相違う部分はここのところです。金額の多寡については言及しませんが、

浦和に行けばこれから迎える選手としての全盛期を選手としての進化の可能性を閉ざした状態で過ごすことになったことでしょう。

そんなことは、サッカーの求道者たる高橋秀人が選択する余地などありませんでした。

この残留が正しかったということを証明するのは結果を残すことです。しかし最早、その結果の半分出ているのではないでしょうか。

サッカー人としての進化のために必要な舞台が、東京残留によって整ったと言えるからです。

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