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フットボールの発展とサポーターの「目」2/4

2014/04/07 19:56配信

ミノル・スアレス

カテゴリ:コラム

クォリティよりもプロモーションが優先される嘆かわしい時代

多くの買い手が物事の価値を見極める「目」を持っていない場合、目先の利益にとらわれている一部の売り手は、望ましくない方向に動き出す。クォリティを追及することをやめ、プロモーションにばかり注力するのだ。クォリティが伴わない中でのプロモーションは、ごまかしに過ぎない。

しかし、多くの買い手はそのことに気づくことができず、流され、対価を支払ってしまう。味をしめた生産者は、よりプロモーションに躍起になり、少なくとも経済的には発展する。その結果、真剣にクォリティを追求している素晴らしき生産者達は、一向にそれに見合った対価を手にすることができないという状況に陥っている。

プロモーションそのものが悪と言うわけではない。素晴らしき生産者達はそういった努力が不足しているという見方もできるだろう。それにしても、クォリティよりもプロモーションが優先されるというのは、あまりに嘆かわしいことではないだろうか。

日本人は、偶像に金銭をつぎ込んでいる。

日本においては、音楽業界がその最たる例であろう。今や頭痛の種となるようなひどい音楽が街の至るところで流れている。素晴らしい音楽は世の中にいくらでもあるにも関わらず、人々はそのような騒音に金銭を払っているのだ。

現在の日本の音楽シーンは、アイドル全盛の時代と言われているらしいが、この言葉は如何に日本の人々が音楽の良し悪しを見極める「目」を持っていないかを表している。(正確には、目ではなく、耳というべきであろう。いずれにせよ、言わんとすることはご理解頂けるのではないかと考えている。)

Idolとは日本語で、「偶像」という意味であり、「偶像」とは仏像等の信仰の対象となるものを指す言葉である。言い得て妙ではないか。偶像は象徴に過ぎず、それ自体が自身に価値をもたらすわけではない。日本人はそんなものに金銭をつぎ込んでいるのだ。(宗教は自身に教えをもらたす。宗教信仰を批判しているわけではないことは、念のため、付け加えておきたい。)

クラブとサポーターも、同様に単なる売り手と買い手の関係には留まらない。

そもそも、売り手、買い手という分け方は、金銭の動きに目を向けた場合の分類方法に過ぎない。音楽業界の実態は、経済的な面では買い手であるファンが、金銭を支払うだけの存在ではなく、業界の水準、作品のクォリティに大きな影響を与えていることを示している。つまりは、音楽の良し悪しがわかる日本人があまりにも少ないがために、業界は凋落したのだ。

フットボールの世界におけるクラブとサポーターも、同様に単なる売り手と買い手の関係には留まらない。サポーターの「目」はフットボールのクォリティに大きな影響を与えている。

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