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大久保嘉人はフィットしたのか? FC東京での変化を追う

2017/05/11 18:51配信

武蔵

カテゴリ:コラム

昨年、移籍市場の目玉となったのが大久保嘉人です。

2013年に川崎に加入して以来、3年連続で得点王を獲得し

在籍した4シーズンで82得点を挙げた選手の、34歳での決断でした。


新天地で危惧されたのは、川崎と同じように得点を挙げられるのか?という事であり

具体的に言えば、中村憲剛がおらず、風間八宏のシステムの無いチームで

川崎と同じような活躍が出来るのか?というものでした。


昨季、J1セカンドステージ第6節・新潟戦からの就任以来

8勝2分2敗の好成績を挙げた篠田善之監督のチームにとって

森重真人、丸山祐市、梶山陽平、田邉草民のビルドアップを抜きには出来ないものの

そのベースには「ハードワーク」というものがあります。


昨年、3番目に走行距離の短い(9.711/90分)選手であった大久保が

このチームにフィットできるのか、どのようにフィットするのか?ということが

このオフに、楽しみとともに不安を以て語られました。

シーズン序盤、不満ばかりだった大久保

結論から言うと、シーズンが始まってからの大久保は非常に苦しみました。


守備に脆さはあったものの、流麗なパスワークで相手を崩す

昨年までの川崎のサッカーをこそ「サッカー」だと定義付けた上で

「サッカーがしたい」などとメディアに不満を吐露することが何度もありました。



それがピッチ内に、しかも顕著に表れたのは

チームの核たる高萩洋次郎がケガで離脱していた5,6節のことでした。


図式としては、後方の選手たちがビルドアップに苦しむ中

大久保が下りてきて支援を試みるのですが

それがチームのシステムに組み込まれていないため、前線が孤立してしまい

また、大久保が低い位置でボールを持っても、彼の選択肢はあまり多くなく

まともな攻撃とならない、というものでした。


サッカーで一番良いとされるのは、全員が正しい方向を向くことです。

ただ次善とされるのは、1人が正しい方向を向くことではなく

間違った方向であっても、全員が同じ方向を向くことです。

そして、大久保が示すやり方が正しいという保証も無いのです。

かくして、大久保はピッチ内でイライラが隠し切れなくなっていきました。

確かに、川崎時代でも感情を表に出すことはありました。

しかし、それは決まって、相手ゴール前でのものでした。

FC東京での大久保は、それよりも20mも30mも後方で感情的になっていたのです。

この違いは、その距離以上に大きなものがありました。

ポイントは不出場だった浦和戦

ただ、大久保はその間も、ただ不満を口にするだけではありませんでした。

開幕から、FC東京にフィットしようとしている痕跡があります。

それが「走行距離」です。


1~6節まで全て90分フル出場し、平均で10.262kmを走っています。

これは上記のとおり、昨年よりも多い数字です。


これは、ポジティブな変化とばかりは言えません。

それはもちろん、走るために移籍したワケではないからであり

個人の得点もチームの成績も伴っているとは言えない状態だったからです。

しかし、走らねば試合に出られない

「ハードワーク」をベースとしたチームへと移籍したことは事実です。

この年にして、それに順応しようとする姿勢は素晴らしいものがあります。



そして、大久保とチームにとって、大きかったのは浦和戦でしょう。


この日、大久保は練習中の脳しんとうにより欠場しましたが

チームは、それまでよりも一丸となり

連敗を避けるために「ハードワーク」を体現し、チームの方向性を示しました。


大久保は次節の新潟戦で復帰しましたが

チームは浦和戦の良いところを受け継ぐ形を採り、大久保もそれによく順応しました。

具体的には、あまり下がって来ず、裏抜けを愚直に繰り返すことで相手を押し下げ

高萩を欠き、拙い状態の味方のビルドアップに対してスペースを提供するなど

自己主張より先に、チームプレイに徹する姿が見受けられました。


3点めとなった自ら決めたPKも、自身の裏抜けによるものです。

内か外かは微妙でしたが、その運動量のご褒美と言えるものでした。


9節の広島戦後は、1‐0ではダメと内容に見合わないスコアに苦言を呈したものの

それは90分を過ぎ、放り込んでくる広島の出どころの全てに対して

プレッシャーを掛け続けた上での発言です。

以前のものとは明らかに違います。


そして10節の仙台戦では、攻撃面でもフィットして見せました。

大久保が挙げた2点はいずれも、FC東京の得点源と言える太田宏介のFKからです。

そして遂に、87分に足をつり、加入後初の途中交代となりました。

何度もピンチを呼んだ仙台のパワープレーを防ぐべく走り回った証です。



大久保はフィットしつつあります。

もちろん、効率が良いとは言えませんし、チームとしての完成度もまだまだでしょう。

これから夏を迎え、8月には連戦も控えています。

このスタイルが持続可能かどうかは、やってみなければ分かりません。

ただ確実に、大久保はフィットしつつあります。

これは、今後のJリーグ・優勝戦線を語る上で、無視できない材料と言えるでしょう。

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