CHANT(チャント) 浦和レッズ

浦和vs鹿島 「ペップ流ミシャ式が実を結ぶ日は来るのだろうか」

2017/05/09 19:33配信

武蔵

カテゴリ:コラム

「勝った方が首位」


首位の浦和と2位の鹿島の一戦は、ゴールデンウィークの首位決戦ということで

埼玉スタジアムには57000人ものサポーターが詰めかけました。



両チームとも、来週のACLグループリーグ最終節まで1週間を空けることができ

また、両チームともグループリーグ突破を既に決めているため

この首位攻防戦に全力投入ができる体勢となっているはずでした。


ただ、浦和は柏木陽介と遠藤航をケガで欠き、やり繰りを余儀なくされました。

対する鹿島は金崎夢生が試合の前々日まで別メニュー調整となったものの

試合にはキッチリと間に合わせてきました。

ほぼベストメンバーと言える陣容を揃えることに成功しています。


昨年のチャンピオンシップ決勝と同じ組み合わせということで

浦和はリベンジを、鹿島は返り討ちを目論みます。

サッカーにおける3つの優位性と浦和の取り組み

サッカーにおける優位性は3つに分けることができると言われています。


1つは質的優位です。

1対1で、相手より身体能力や技術で上回る状況を作ることで

そこを突破口にするという考え方です。

例えとして、サイドでドリブラーに1対1を作らせることなどが挙げられます。

2つめは、数的優位です。

これは運動量を上げ、局面に相手より多い人数を集中させることを指します。

単純なオーバーラップ、人数を掛けた攻撃がこれに該当します。


最後の3つめは、位置的優位です。

これは位置取り、つまりポジショニングによって優位を作るやり方です。

例を2つ挙げますが、まず1つは、よく表現される「ライン間」のことです。

相手が442でブロックを作ったと仮定すると

攻撃側が、44のラインの間、あるいは相手選手の間に位置取ることで

そこにボールが出た際に、誰がマークに行くのか混乱してしまいます。

その混乱(=崩される、動かされる)状態を利用して、ゴールを目指すというやり方です。

もう1つは、自分たちがボールを持つ中で、言わば布陣を変更するやり方です。

例えば、ボールを取りに来る相手の2トップに対して

4バックの2CBがボールを持っていては数が合ってしまい、危険です。

よく見るのは、ボランチが下がり最終ラインを3枚とし、数的優位を作るやり方です。

このように、相手の布陣に合わせて位置取りを変えることで数的優位を作ること

それにより相手を動かすことは、ただの数的優位とは区別され、位置的優位とされます。

この位置的優位を念頭に置いたプレーモデルをポジショナル・プレーと呼び

リヌス・ミケルスの時代から受け継がれてきました。

現代では、ペップ・グアルディオラが第一人者と言えます。


グアルディオラのチームの練習場は、バルセロナでもバイエルンでも

主に、縦に5等分にされたピッチを使用します。

選手が、この局面ではどのレーンにいるべきか、ということが

日々の練習で刷り込まれているということです。

浦和のミハイロ・ペトロビッチ監督の代名詞と呼ぶべきミシャ式は

守備時は541で、ただ人数を掛けて守ることで数的優位を作るだけですが

攻撃時の415は位置的優位を生み出すためのものと言えます。

3421の状態から、相手のプレスに合わせて最終ラインを4枚としたり

ボランチが両方下がって3枚(5枚)となるなど、種類は豊富です。


その浦和は今シーズン最初の試合公式戦で

そのミシャ式に、さらにペップ流を混ぜることに着手しました。

形としては325の左右のCBを相手の2トップ脇に位置取らせて

そこを出発点とするやり方です。


ただ、その試合では、左右のCBに攻撃の起点としてのクオリティが不足していたこと

また、相手のボランチの質が高く、度々のデュエルで負けたことなどがあり

2点を先制される苦しい展開となったことが印象的です。

その試合の対戦相手は、この日と同じ鹿島でした。

鹿島は、その時のスタメンから、1人が入れ替わっただけです。

浦和の難解な取り組みは実を結ぶのか?

浦和の特殊な攻撃に対する鹿島の守り方は

442の最終ラインはペナ幅に絞り、大外はSHが戻るというものでした。

時には6バックのような形を採ることで

最終ラインの間にスペースを生み出さないことが目的となります。


この日の浦和の攻撃で目立ったのは、これを崩すための「ペップ流」の攻撃です。


前半16分に1つ見せたのは、大外のレーンでボールを受けたWB宇賀神友弥を

左SBと化した槙野智章が内側のレーンから追い越して裏抜けするというものです。

これは、槙野と宇賀神が大外のレーンにいるため

このマーカーである遠藤康と伊東幸敏を外に引き出しています。

そして、左シャドーの興梠慎三も下りて小笠原満男も引き連れているため

右サイドに広大なスペースを開けることに成功しました。


エグった槙野がもう少し中の状況を見ることが出来ていたら

得点の可能性はもっと上がったと言える、とても良い場面でした。

もう1つの形は、WBが中で起点となるものです。

槙野がサイドに張って宇賀神が中、森脇良太が張って関根貴大が中

といった形がより多く見られました。

前半22分には、サイドではなくハーフスペースで関根が起点となり

興梠へ、相手の視野をリセットするようなパスを送り

興梠が、タイミング良く裏抜けをしたラファエル・シウバへ浮き球のスルーパス。

これも決定機となりました。

浦和がこのような難解な仕掛けを多用したのは、もちろん鹿島を崩すためです。

鹿島は金崎とペドロ・ジュニオールという、スピードとパワーがあり

カウンターの起点にも終着点にもなれる2トップを擁しており

ブロックが低くても、カウンターの脅威を減らすことは無いという強みがあります。

そのため、チームビルドを完全に守備を出発点として考えることが可能となります。

それに加え、レオ・シルバや昌子源らの強力な中央守備陣も擁しており

浦和が得点を挙げるためには、彼らをゴール前から動かさなければなりません。


WBを中に入れるというのも、位置的優位を掴むためのものであり

その攻略の対象は鹿島のボランチであり、最終的にはCBです。

浦和はこの、難解な仕掛けにより、相手を動かしに掛かりました。


このように浦和は、どこを切り取っても質的優位が表れるような鹿島の陣容に対して

難解な仕掛けで立ち向かうことを選択しました。

そしてそれは、ペトロビッチ監督が就任して以来、変わらぬ姿勢でもあります。

予算規模ほどは大型補強をしないのが、ペトロビッチ監督の浦和です。

そして補強をしても、戦術にフィットしない選手は放逐されていきました。


何よりも戦術を優先し、このミシャ式という教義を以て戦う

これが、浦和に根付き始めている姿です。


ただ、難解な仕掛け=選手を守備時の位置から大きく動かすことには

それ相応のリスクが伴います。

それは、切り替えの際にはブロックを形成するための時間がより多く必要となり

その分、肉体的、頭脳的に確実に負担が増すからです。


また、編成を「難解な仕掛け」に合わせる必要があります。

つまり後まわしとなる守備に関して、その質に期待するのは酷と言えるでしょう。



直後の、この試合唯一の得点は、金崎の質的優位によるものです。

CBとしては強さも高さも無い森脇が金崎にデュエルで敗れ

土居聖真の上がりを警戒した関根のカバーも遅れ、シュートまで持ち込まれました。

森脇は、長らくペトロビッチ監督を支えてきました。

それは、守備というよりも、攻撃面での才能を買われてのものです。

この新しい取り組みでも重要なピースとなっていることからも分かります。

ただ、中央のゾーンで背を向けてボールをキープした金崎を相手するには

守備者として物足りない選手だということが、この日、改めて判明してしまいました。



ミシャ式擁する浦和は、ペップ流も交え、さらに攻撃的に先鋭化していくようです。

それが、浦和にとっての目標であるリーグ制覇に向けて

最短ルートだというクラブとしての判断なのでしょう。


ただ、こういった守備面での弱さ

言わば質的劣位によって、勝負どころで差を付けられてきたことも

浦和にとっては目を背けてはならない事実です。


ペトロビッチ監督と浦和の難解な取り組みは実を結ぶのでしょうか?

補強により質的優位をさらに高めた鹿島に、この日、再び敗れたことは

その前途が多難であることを示していると言えるかもしれません。

Good!!(100%) Bad!!(0%)

この記事も読んでみる