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【ロアッソ熊本】 熊本地震から1年 継続されるJリーグファミリーの絆 【Jリーグ】

2017/04/14 21:24配信

飯守 友子 (CHANT編集部)

カテゴリ:コラム

突如として襲った―。

そう表現する他ない、突然のことだった。
4月14日。21時26分。
最大震度7を観測するほどの大きな地震が熊本県を中心に起こり、さらには4月16日未明には本震とされる再び大きな地震が襲った。

地震列島と表現されることもあるほどに、日本は地震大国と言われているが
またも起きてしまった大きな地震。多くの犠牲者を含めた甚大な被害が報告される地震となってしまった。

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Jリーグは、ファミリーである―。
東日本大震災の時、ひとつになった支援の輪。
何度もこういったことが起きて良いことはないが、経験があったからこそ熊本の地震を受け止め再び結束し、手を繋いだ。

2016シーズン。
Jリーグではさまざまな記憶に残る瞬間や場面が生まれたが、
シーズンを振り返るにあたり忘れられないことは、なによりも熊本へ向けてひとつとなった Jリーグの輪だった。

支援はブームじゃない。
その言葉を掲げ、東日本大震災の支援を続ける川崎フロンターレや、それぞれのクラブで支援活動やイベントを継続する中で起こってしまった、突如として熊本を襲った大地震。

テレビ画面を通してもその状況が想像を絶するのであろう光景であることや、
目の前にあった当たり前となっていた生活が、一瞬にして大きく変わってしまう厳しく過酷な現実を前にしなくてはならないであろう光景に、胸が詰まる。

地震が起きた直後から、入ってきた情報を逐一メディアが伝えてくれるものの、すぐにはその大きな被害を把握することはできない。
時間が経つにつれて、ひとつひとつ甚大な被害が明らかになっていくその情報に、複雑で沈痛な想いとなる。

熊本には ロアッソ熊本が在る―。

Jリーグサポーターは、共に「Jリーグ」で戦うクラブがある地域ということもあり
地震発生当初から、自分たちにできることはないかとインターネットを使って発信し、情報を共有した。

4月16日・土曜日に九州各地でJリーグが行われるはずだったが、16日未明に大きな震度を記録する本震が起こり、九州で開催される試合や大きな地震の影響が大きかった地域のクラブの移動が困難となることもあり、多くの試合が中止となった。
当日に急遽開催中止が決まったため、前日から現地に向かっていたサポーターも多く、地震を経験したというJサポーターも多かった。

ロアッソ熊本の選手たち、及び選手の家族や職員やスタッフなどの無事が確認されたものの
クラブを取り巻く状況は「今はサッカーをする状態ではない」という厳しいものだった。

大きな地震を経験した選手たちや家族のショックは大きく、周りの環境や状況もサッカーをするという選択肢が存在しないほどの状態。
日常を過ごしていた当たり前のひとつひとつのものが、当たりまえではなくなった現実。
熊本出身選手も多く、実家が被災してしまった選手もいたこともあり、目の前に拡がる信じたくない光景を受け入れるだけでも時間のかかることだった。

2016シーズンが始まり、ロアッソ熊本は好発進で好調であった。
リーグ序盤ではあったものの首位に立った時期もあり、プレーオフ圏内に位置する中、起きた地震だった。

ロアッソ熊本は活動を一時的に停止し、ロアッソ熊本関連の試合が一部延期となり、進んだJリーグ。
サッカーをするような状況ではないことを察しながらも、多くのJリーグサポーターや各クラブ、選手たち、関係者も ロアッソ熊本が帰ってくる日を待っていた。

その間、各クラブでは熊本への支援を次々に発表。
試合会場や街頭で募金活動を行い呼びかけを行った他、選手たちが想いをSNSで綴るなどし、ロアッソ熊本へ向けたメッセージを発信し続けた。

地震から約1ヶ月後の5月15日。
ロアッソ熊本がJリーグへと帰ってきたのは、アウェイ・ジェフ千葉戦。

サッカーをすることさえも「本当にサッカーをして良いのか」という気持ちを抱きながら向かい合った。
多くのサポーターや熊本の人たちに「戦ってほしい」と希望の存在として気持ちを預けられたことや、本拠地も練習場も県外へ出て仮の場で戦うことも選択肢としてあったが
熊本から戦うことに意味があるという想いの下、練習場の確保が難しくあっても、熊本で戦うことを決めたロアッソ熊本の再出発。

ジェフ千葉の顔といえる存在となり活躍した巻誠一郎が熊本に在籍していることもあり、多くのジェフサポーターが当時の巻のユニフォームを着るなどして、復帰のロアッソ熊本を迎えた。
充分に練習をはじめ試合もできる状況でもメンタルでもない日々を経験し、一人、また一人と練習に復帰しボールを蹴られるようになった日々の熊本での時間の中で、熊本を背負い強く戦う意思を持って行われた試合。
熊本の多くの人々に頑張ってほしい、戦ってほしいというメッセージを届けられ、練習も準備もまだ不十分ながらピッチに立ったロアッソ熊本の選手たち。
90分のフルコートでの練習もままならない状況が続いたこともあり、脚が途中で攣ってしまう選手もいながらも、最後までを戦いきった。

結果は0-2。

ロアッソ熊本の選手たちに、惜しみない拍手がスタジアム全体から送られた。

ジェフ千葉のゴール裏からも、ロアッソ熊本の選手たちやサポーターへ向けての横断幕が登場し、大きな大きな熊本コールが響いた。

続く22日に行われた、ロアッソ熊本ホーム試合は、柏レイソルがホームスタジアムである柏 日立台サッカー場を貸し出し行われた。
熊本から遠く離れた場所ながら、多くの熊本サポーターが駆けつけ、選手たちに共に戦おうと大きな声で背中を押し戦った。
選手たちが戦っていることは希望、と語るサポーターが多かった。

ロアッソ熊本のホーム試合ということで、ひとつでも多くの座席を埋めることがロアッソ熊本の収益になり、支援に繋がるという理由から
ロアッソ熊本を応援しようとたくさんのクラブのユニフォームを着たサポーターたちが、日立台に駆け付けた。その数はロアッソ熊本の平均観客数を大きく上回る、8000人以上。
柏でのホーム試合とあり、スタジアムの場所がわかりやすいよう当日は柏サポーター有志たちが柏駅前で多くのサポーターにスタジアムまでのアクセスが描かれたビラが配布され、
日立台サッカー場には柏レイソルのホーム試合開催時と変わらず、多くの飲食ブースが並んだ。

柏レイソルの運営スタッフが前日行われた柏レイソルのホームゲーム後から、ロアッソ熊本のホームゲーム開催の準備を始め、柏レイソルでボランティアスタッフとして試合運営をサポートする人たちも同じくロアッソ熊本の主催試合をサポートし、
さらには流通経済大学から80名のサッカー部員たちが駆けつけ、ボールボーイや運営サポートなどを行った。

日立台サッカー場は無償でロアッソ熊本に貸し出され、運営スタッフ及び柏サポーター有志が行ったビラ配り、ボランティアスタッフ、流通経済大学サッカー部…この日8000人規模の試合運営に手を差し伸べた人たちすべてが
困ったときはお互い様、と当たり前のように無利益で行動した。

ロアッソ熊本のグッズを手にする他クラブのサポーターたち。
募金、グッズ購入、試合観戦。サッカーを通じてできる支援で多くのサポーターが熊本にメッセージを届けた。

スタジアム全体から放たれた、多くの「がんばろう熊本」という言葉は、ロアッソ熊本だけでなく、熊本の多くの人々にも届けられたであろう。

その後、熊本と同じく大きな地震を経験した地に在るクラブ・ヴィッセル神戸が開催を協力し、ノエビアスタジアム神戸でもホーム試合を開催。


ヴィッセル神戸の選手たちも募金活動に駆け付ける等、クラブとして協力・支援するなどし、他クラブのサポーターがさまざななユニフォームを身に付け、ロアッソ熊本に「がんばろう熊本」とメッセージを届けた。

Jリーグでは、各チームとくまもんがコラボしたタオルマフラーを販売。
収益を熊本に送るとの支援を始め、多くの人々が購入し試合会場でタオルマフラーを掲げた姿が観られた。

ロアッソ熊本がアウェイで戦いに来ると、各クラブは支援に繋がるイベントを多く開催した。
戦う姿が、多くの人々に響き、応援と感謝に繋がった。

多くの人々が、熊本を想った―。
選手の名前を一人も知らなくとも、ロアッソ熊本を通じて Jリーグを通じて
footballを通じて、想いを通じた。

そういった場面が、多く見られた2016シーズンだった。


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東日本大震災は、今年の3月11日で6年を迎えたが、復興が進んだと実感できる場所もあれば、復興にまだ時間を要する場所もある。
心の部分に至っては、ショックや悲しみが消えることはどんなに時間が経っても難しいであろう。
熊本地震が発生してから1年が経過した。
まだ1年。だが報道は日々少なくなり現在の状況が大きく発信されることは少なく、今の現実を本当の意味で知ることは現地以外では難しいかもしれない。
実際に報道されていない地域での過酷な被災も現実には多く存在するという。


2017シーズンが始まった。
ロアッソ熊本は今季もJ2にて、熊本を背負い 全力で戦っている。

Jリーグには今年54ものチームが存在し、それぞれが戦う。
敵か味方かという戦いで、ライバルも多く存在し、時にいがみ合いとなることもある。
絶対に負けたくない相手も、普段は憎しみに近いライバル心を持つ相手も存在する。

それでも、極地に立たされた時。
ごく自然に「当たり前」に迷うことなく、自分たちにはなにができるかと自身で探し発案し、手を差し伸べることができる。

それが、Jリーグが持つ力。繋ぐ絆。

Jリーグ・ファミリーなのだ。

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