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FC東京vs川崎 「試合の中で課題を解決する姿勢」

2017/03/24 20:10配信

武蔵

カテゴリ:コラム

J1第4節は、第29回多摩川クラシコが行われました。

今年は大久保嘉人が多摩川を渡り、また新たな因縁が生まれたことでも注目を集め

その甲斐あってか、味の素スタジアムには3万6千を超える観客が押し寄せました。



多摩川を挟んだこの両クラブは、ともに組織力が課題となっています。


FC東京は大久保を始め、高萩洋次郎や永井謙祐、さらにはピーター・ウタカなど

大型補強と呼ぶに相応しい豪華な顔ぶれとなりました。


ただ、そういった選手の入れ替えの影響があるのか

昨年のリーグ戦・終盤で見せたような組織力には陰りが見えます。

第2節の大宮戦は勝利を得たものの、前節のG大阪戦は大敗を喫しました。

いずれも、内容面では乏しい試合となったことは

この先、長期的な成績を求めるという点では不安を残します。



川崎にも同じようなことが言えます。

大久保の穴埋めとして、家長昭博やハイネルを補強したものの

いずれもストライカータイプではありません。

当然、決定力という点において、小林悠に掛かる比重が増しています。


ただ、小林悠は優れたストライカーではあるものの

驚異的な身体能力は無く、体格にも恵まれているとは言えません。

そんな現エースが、大久保という絶対的なファーストトップを失い

プレッシャーが増す中でも点を取れる組織を作ることが

今季のチームとしての課題と言えるでしょう。

ただ、鳥栖戦など、今のところは十分とは言えない状況となっています。



この試合は前半から、そういった両チームの課題が出た試合となりました。

ただ、ゲームが進むにつれ対応を見せたのはFC東京です。

試合の中で課題を解決しようという姿勢が勝敗を分けたと言えるかもしれません。

次第に上手くいかなくなる川崎と、次第に落ち着きを取り戻したFC東京

「立ち上がり、危ないシーンがあった」(篠田善之監督)

と言うように

FC東京は開始早々にCKで決定機を作られました。

ただ、ある意味CKの守備より問題だったのは、これまでと同じ単発なプレスであり

相手を制限することのない守備となっていたことです。

そのため、風間イズムの色濃く残る川崎に、好きにパスを繋がれる場面が目立ちました。


ボールを持ったらさすが、というのは大型補強の為せる技でしょうか。

高萩から大久保へのスルーパスは決定機未遂まで行きました。

ただ、組織的でない守備のため、望む形でのボール奪取はできず

そのため、ボールを持つ機会も制限されることとなりました。

ただし、これはあくまで「立ち上がり」の趨勢です。

ここからFC東京が落ち着きを取り戻したのか、組織を取り戻していきました。

それとともに、ペースが掴めなくなるのは川崎です。


「前半の入りは悪くなかったが、途中からボールを持たされた」(鬼木達監督)のとおり

ボールを持ちたいはずの川崎が、ボールを持っても効果的な攻撃が出せなくなります。

これは中国帰りであるというコンディション面での差もあるのでしょうが

なんにせよ、小林悠へのお膳立てをする組織力の有無という課題が出たと言えます。


ただし、川崎の問題は、前線の動き出し=運動量=コンディションというよりは

「ボールが出ない」(鬼木監督)ことにあったことは忘れてはなりません。


前半の川崎の決定機は、大島僚太の得意技であるコントロールオリエンタードから

小林悠がペナルティエリア外からシュートを放ったシーンと

登里享平がスピードでぶっち切ったものでした。

個人技でも良いのですが、再現性=組織力は低くなってしまいます。

「個」に向くか「組織」に向くかで分かれた明暗

後半、上手くいってないことを象徴するように、川崎は先に交代カードを切ります。

0トップ気味にチャンスメイクを図っていた阿部浩之に代えハイネルを投入し

ハイネルの個人技から小林悠に繋げる意図を見せます。


さらに、エドゥアルド・ネットに代え長谷川竜也を投入し

中村憲剛を大島と並べてボランチに置きました。

これは、中村憲剛の個の力で「ボールが出ない」という課題を解決するためでしょう。


ただ、これらの交代はいずれも諸刃の剣です。

ハイネルをサイドに置くことで、サイドに守備の穴を作ってしまい

中村憲剛を大島と並べてボランチとするのも守備に不安を残すこととなります。

結果的に、課題は解決に向かわず、そして失点の遠因となってしまいました。



FC東京はハードワークを基調とするチームであり

最初から、相手より多く走るという合意が取れていることもあってか

ボールを持てずとも、人数を掛けて守る、中央を固めるといった基本的な対処により

組織力と、この試合の均衡を保つことに成功していました。


そんな中、試合を動かしたのはピーター・ウタカ・・・

の投入によりサイドにまわった阿部拓馬です。

水曜日のルヴァンカップ・仙台戦で2得点を挙げスタメンの座を勝ち取った阿部拓馬は

この日は1トップ・大久保の下がりめに入ると、献身的に働き

チームの組織力を保つ原動力となっていました。


そして、ウタカがトップに入ると右サイドハーフにまわり

しっかりと守備のタスクをこなしながらも、最前線に顔を出し続けました。

そして、前半から秀逸な動き出しで決定機を作りましたが

ここでもそれを発揮してみせました。



先制点のシーンは、FC東京の組織的な守備からのショートカウンターです。

前方のパスコースを全て消し、バックパスをカットしての速い攻撃でした。

FC東京の粘り強い組織的な守備が、阿部拓馬の動き出しと合わさり

川崎のマズい守備もあり、オウンゴールを呼びました。


これ以降、川崎は有効打を繰り出せなくなり

FC東京が着実にゴールを重ねた結果、3‐0という大差になりました。

そのキッカケとなった先制点の形は、やはりこの試合で一番重要なものでした。


先制点が後半31分であったことからも分かるとおり、その差は僅かと言えます。

それを分けたのは、緊迫した状況の中で「個」に向かうか「組織」に向かうか

という選択にあったと思います。


篠田監督は、試合後に

「個の突破も1つの手」としながらも

「グループで打開していくのがサッカー」と言い切りました。

この言葉に、この試合の趨勢を分けた先制点と、そこに至るまでの道のりが

凝縮されているように感じます。


ともに組織力に課題があるチームにあって

「個」ではなく「組織」の方向に傾いたチームがこの試合を制したというのは

課題を解決する姿勢を見せたご褒美と言えるのかもしれません。

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