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FC東京vs大宮 「大宮、仏作って魂入れず」

2017/03/07 19:38配信

武蔵

カテゴリ:コラム

「『内容が良かった』だけで終わっちゃいけない」

試合後、そう口にしたのは、大宮のCB菊地光将です。


この不動のキャプテンが言うとおり

今季の大宮は、内容では相手を上回っていると言って良い試合運びをしているものの

結果として、開幕節の川崎戦、そしてこの日のFC東京戦と連敗してしまいました。


いったい何故なのでしょうか?

そこには、優秀な土台を持ちながら、必要なものが欠けたチームの姿がありました。

「内容は良い」大宮の前半が象徴するもの

大宮の長所の1つは、規律の取れたゾーンディフェンスにあります。

これにより、相手のビルドアップを阻害し、自らのペースに持ち込みます。

この日の大宮には選手の入れ替えがあったものの

江坂任、ペチュニクの2トップはファーストディフェンスをサボらず

後ろもそれに呼応して、FC東京のビルドアップを妨害し続けました。

FC東京は繋ぎたいチームです。

それはスタイルもあり、前線に高さが無いということでもあります。

従って、442相手ということで、ボランチが落ちて3枚になるなどして

後ろからしっかりと繋ぐ必要があります。


しかし大宮が、FC東京のCB間を分断し、片方のサイドへ追い込むなど

かなり整理された守備の仕方をしてきたこともあり

FC東京のビルドアップ隊には、あまり時間が与えられませんでした。


そうするとFC東京は、ロングボールを蹴らされてしまうのですが

大宮は、それが戦術どおりであることから、ロングボールを跳ね返します。

そして、FC東京はビルドアップに人数を割いていることもあり

中盤の人数が減り、スペースが空き、間延びしがちとなってしまいます。

大宮がセカンドボールを制することで、前半のペースを握りました。

FC東京と大宮では、組織的な守備において、かなりの差が見受けられました。

大宮は上記のとおり、デザインされた組織的な守備を敢行しました。

しかし、FC東京は制限したい方向、誘導したい方向も見えず

大宮のビルドアップに対して人数を揃えて追い込む場面も見られず

ボールを取りに来ないと見るや、中央突破を図られてしまうシーンもありました。


ただ、そんな中でも最初の決定機を迎えるのはFC東京であり

前半12分のロングカウンターは、その中央突破を防いだあとに

パス2本でゴール前まで運んだものでした。


これが、この日の試合を象徴するシーンと言うことはできるでしょう。

前半は大宮にとって思いどおりの試合展開であったことでしょうが

大宮には決定機と言えるものがあったでしょうか?

前半17分の江坂のシュートは、確かに強烈なものではありましたが

コースを切られており、入る可能性は低かったと思われます。


前半の大宮は、いくら内容が良くても

その程度のシュートチャンスしか得られていませんでした。

良い内容を結果に繋げられない大宮

後半も、20分までは大宮が狙いどおりの守備を続けることで

試合のペースを握り続けたと言えるものとなりました。


ただ、結果が伴いません。

この時点で、スコアは依然として0‐0です。

そして、プレッシングというものについて2つ言えることがあり

それは「疲れ」と「慣れ」です。


つまりプレッシングというものは、どんなに組織化されていても

自分と相手と、その双方の理由により、その効果が長続きしないのです。



FC東京の先制点はショートコーナーからのものですが

そのCKを獲得したのは、高萩洋次郎のロングパスに反応した永井の裏抜けです。

ゾーンディフェンスで重要なのは

ファーストディフェンスのボールマークと、後ろの選手のそれに準じた位置取りですが

この場面は、ボールホルダーの高萩を抑え切れていなかったことが原因です。


疲れは仕方がありません。

気持ちでもどうにでもならないことはあります。

問題は、それまでの良い時間帯で得点を奪えなかったことです。

大宮には2CBを始め、堅い守備陣が揃っています。

1点でも取っていれば、低いラインで安全に試合を進めることもできますし

FC東京相手にビルドアップで優位に立ち、時計の針を進めることもできます。


しかし、0‐0であることから、ボールを奪いに行かねばなりません。

そのために、ハイラインを敷かねばなりません。

そして、プレッシングの強度はいつまでも続くものではありません。

この日の大宮は、そこから、ものの見事に失点してしまいました。



今の大宮は、良い内容を結果に繋げられていないのです。

その為に必要なものが欠けているのではないでしょうか?

大宮に欠けた、必要なものとは?

もちろん、家長昭博の放出というのはあるでしょう。

起点となりつつ、パスアンドゴーで相手を剥がす動きをする家長は

大宮にとって貴重な、攻撃のアイデア源となっていました。

その穴埋めとするべく清水から獲得した大前元紀の不在も痛かったことでしょう。


プレシーズン、ムルジャが体調不良で出遅れた、というのもあるでしょう。

この日は、ムルジャが途中出場を果たすと

独力、ないしはペニュニクとのコンビプレーからシュートチャンスを得ました。


忘れてはならないのが、泉澤仁の放出です。

サイドに張ってボールを引き出し、相手を伸ばした上での強烈なドリブルは

大宮の戦術の中心となっていました。

大宮は今オフ、確かに大きな傷を負いました。

ただ、残された選手たちはそれで良いのか?という話です。

それで良いとして、過去最高順位となった昨年を上回るチームを作れるのか?

ということです。


上手さ、強さ、高さといった武器を持ち合わせていないのなら、労を惜しむべきです。

しかし、この日の大宮は、戦術的で好感の持てる試合運びはしていても

フリーランや、ボールを引き出す、相手の脅威となる動きには欠けていました。


この日の大宮の、良い指導者によって整理され

個人能力の高いボランチコンビによって体現されたビルドアップは

確かに相手のプレスを空転させ、大宮の流れを作り出していました。

しかし、ボールを引き出す動きがなければ、その先がありません。

それが

「一手、二手と持ち過ぎたり、遅れている部分」(渋谷洋樹監督)を

生みだしてしまったのではないでしょうか?

対してFC東京は、大宮相手に攻守ともに思い通りには運びませんでしたが

永井のフリーランが、確実に相手の脅威となっていました。

鹿島戦では40回を数えたスプリント回数は、この日も38回を記録し

今や、FC東京の劣勢時の武器となっています。

そして、そのスプリント、裏抜けは先制点を生みました。


この日のFC東京の良かった点は、2点を取ったことと

両サイドハーフがしっかり戻ることで、人数を掛けて守り

奪ってのロングカウンターで労を惜しまずにスプリントを繰り出したことだけです。

しかし、もしそうだとしても、サッカーとはそれで充分なのです。


内容は長期的な結果を得るために必要なものですが

あくまで結果を得るためのものです。


結果の出ていない大宮の選手たちは

結果を出すために足りないものを模索する必要があります。

それは例えば、フリーランや動き出しといった労を惜しまない姿勢であると言えます。


少なくとも、今の「内容は良い」ままでは不足であると

現実に跳ね返されている格好と言えるでしょう。



大宮には優秀な組織力という土台があります。

それは、昨年のJ1再挑戦における5位躍進が示すとおりですし

この開幕2戦においても、その組織力は発揮されました。


ただ、今の大宮は、その上に乗るものが無い状態と言えます。

そしてそれは、選手たちが積まなければならないものです。

それが無い今の大宮は、まさに「仏作って魂入れず」と呼べる状態です。


ムルジャや大前の復帰によって

つまり、選手の入れ替えによって、その「魂」が入るのかどうか。

それとも、この日やれなかった選手たちが奮起するのか。

昨年5位だからといって、今年も安泰・・・

というワケにはいかないのが、このJ1という舞台です。

Good!!(0%) Bad!!(0%)

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