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ウタカ移籍の経緯とFC東京に起こる変化

2017/03/03 19:13配信

武蔵

カテゴリ:コラム

昨年のJ1得点王、ピーター・ウタカがFC東京に加入しました。

広島からFC東京へ、1年間の期限付きでの移籍という、公式の発表です。

この、2年間61試合で28得点の実績を持つ元ナイジェリア代表の助っ人の去就は

なぜ、ここまで決まらずにもつれたのでしょうか?

背景にある、ウタカの「ラストチャンス」に懸ける思い

中国で3シーズンを過ごしたウタカが日本へとやってきたのは2015年のことです。

ここで、清水と2年契約を結びました。

降格することになるチームの攻撃の中心として活躍しましたが

翌年は、チョン・テセや大前元紀の手前、小林伸二新監督の構想から外れ

広島へ1年間の期限付き移籍をすることとなりました。


契約が残り1年での期限付き移籍は、実質的に「片道キップ」と言えます。

この際のレンタル料を移籍金の代わりとする見方は一般的なものです。



広島で得点王を獲得するなどの活躍を見せたウタカは、この実績を生かし

かつて、ベルギーやデンマークでプレーしたように

再び、欧州でのプレーを模索し始めます。

この決断は、自身の年齢を踏まえての「ラストチャンス」を掴む意志を示すものでした。


しかし、複数のオファーはあったものの

そのいずれにおいても交渉は不調に終わります。

そこで、ウタカは現実路線に立ち戻り、日本でのプレーを企図します。

ただ、その時点でウタカの立ち位置は流動的なものとなっていました。

「広島以外のクラブは、保有権を獲得する際、清水に移籍金を支払わねばならない」

という、2016年シーズンに在籍した広島有利の契約であったため

ウタカの保有権は、すんなりと広島に落ち着きました。

ただ、ウタカが欧州市場に合わせて2月初めまで欧州でのプレーを模索し続けたことで

日本の各クラブは既に編成を終えているところがほとんどでした。

それは広島も同じで、ウタカの居た1トップの位置には工藤壮人を獲得し

また、フェリペ・シウバを新たに獲得したことで

外国籍選手出場枠も埋まった状態となっていました。


残る選択肢は、広島がウタカを、今季から広がった保有枠内で確保することでした。

しかし、ウタカは自身の年齢のこともあり

次の移籍ウインドウが開くまで試合に出場できないのとすれば

それは選手生命の危機ともなりかねません。

広島としても、高年俸でありながら

もはや構想外となったウタカを遊ばせておくわけにはいきません。


その上で、プレーできる環境を模索した結果

外国籍選手枠に余裕があったFC東京が手を挙げ、交渉妥結に至ったのでした。


ウタカは期限付き移籍であり、広島との公式戦には出場できない契約となっています。

ウタカの加入でFC東京はどう変わる?

ではウタカは、昨季J1得点王に相応しい活躍を

この新天地で見せることはできるのでしょうか?

結論からいうと、それは困難な道となりそうです。


FC東京の選手層を考えると、FWは特に補強が必要なポジションではありません。

ただ、いわゆるセンターフォワードが不足していると言うことはできます。

前線で体を張ってボールを収める仕事をするのが前田遼一の他には見当たらなく

その前田も、レギュラーを獲得することはできていません。


第1節の鹿島戦では、東慶悟や大久保嘉人がその役割を負いました。

そういう状況になるということは

チームとしてその役割を負う選手が必要だということですが

彼らはスローインや自陣からのロングボールでの競り合いにおいては劣勢でした。


ウタカの長所は、攻撃面においては、欠点が少なく万能であることです。

長身と言えるわけではありませんが、身体には厚みがあり

また、その使い方が上手く、ボールを収めたり、身のこなしで相手をかわしたりします。

そういった時間の作り方は、541の布陣で後ろ体重となる広島を、よく助けました。


そういう意味では、FC東京で生きる道がありそうです。

ただ、忘れてはいけないのは、そのチームのプレーモデルです。

FC東京におけるそれは、いわゆる「ハードワーク」というのが

もっとも大きなもののうちの1つと言えるでしょう。

FC東京でセンターフォワード的な選手が先発起用されないこと

その代わりに東慶悟というトップ下的な選手が起用されている理由には

そういったプレーモデル、篠田善之監督の志向があることは間違いありません。

センターフォワード的な役割より「ハードワーク」が優先されているということです。

東はこのチームにおいて、それをもっとも体現している選手と言えます。

前述のセンターフォワード的役割の一部に加え

相手の脅威となる裏抜け、ファーストディフェンスにおけるスプリント

攻→守におけるサイドへのカバーリングなど、その仕事は多岐に渡ります。

これが、FC東京の前線2枚のどちらかに必要なプレーモデルと言えるでしょう。



これらを前提とすると、ウタカが先発の座を勝ち取るためには

大久保との争いを制するべき、という線が濃厚となります。

ただそれは、昨年の走行距離9.711kmに対して、鹿島戦では10.479kmと増やし

FC東京への順応を見せつつある大久保と対峙するということです。


果たしてウタカは、この大久保との争いを制して

つまり、このチームに適応して、先発出場を勝ち取ることはできるのでしょうか?


3月1日にFC東京の練習場に姿を表したということで

キャンプ明けで充実している選手たちと比べ、コンディションには不安が残ります。

それは、ハードワークへの適合への不安と言い換えることもできます。

今のところウタカは、FC東京にとって

強力なオプションとだけ考えておくのが妥当と言えるのではないでしょうか。

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