CHANT(チャント) 川崎フロンターレ

ACL水原戦に見る今季の川崎の問題、それは中村憲剛

2017/02/24 20:47配信

武蔵

カテゴリ:コラム

「川崎の鬼木」は「広島の森保」たり得るのか?

今季の川崎にまつわる興味はただ1つです。

それは、川崎にとっての鬼木達は広島にとっての森保一なのかどうか、という点です。


川崎は、指導者として強烈な個性を発揮した風間八宏監督が去り

後任には、その副官を務めた鬼木監督が就任しました。

これは、同じく個性的なシステムで、広島を強豪クラブへと押し上げたながらも

あと一歩、タイトルには手が届かなかったミハイロ・ペトロビッチ現浦和監督と

その後任で、そのシステムをベースとしては踏襲しながらも

そのバランスを改良することで、3度のリーグ制覇など黄金時代を築いた森保一監督と

多少なりとも、構図が重なるところがあります。


川崎の今季の目標であり、長年の悲願でもあるのがタイトル獲得です。

そのためには、ミシャ式を改良し、初年度にリーグ優勝を果たした森保監督のように

同じくタイトルに届かなかった風間イズムを、鬼木監督が改良すること。

これが最善策であると言えるのではないでしょうか。

この日はJリーグ開幕を前にして、ACLグループステージ初戦

韓国・水原三星とのホームゲームが行われました。

アウェーゴール・ルールも含まれるACLグループステージのホームということで

川崎はベストと言える先発メンバーでした。

ベールに包まれた鬼木体制を知るには、格好の舞台となりました。


そして結論を言うと、鬼木達は森保一ではない、と言えます。

少なくともこの試合では、目標達成に向けた有効策は見られませんでした。


では、なぜ「川崎の鬼木」は「広島の森保」たり得ないのでしょうか?

それは、中村憲剛をどう扱うか?という問題が未解決だからです。

中村憲剛をどこに置くのかという問題

鬼木体制の目玉政策は前線の並びにありました。

つまり、守備時442の前線の2枚に家長昭博と中村憲剛を配し

FWの小林悠を、阿部浩之とともにサイドハーフとして並べるというものです。

プレシーズンからこの並びを採用したことで、風間イズムの所在はともかく

攻守のバランスを考えたチーム運営を行うものと思われました。


何故そう言えたかというと、本職の阿部はもちろん、小林も走力があり

走力の重要性が増す現代の442のサイドハーフの条件に合致します。

小林は、守備重視と言われた日本代表のオーストラリア戦で

実に82分もサイドハーフとして走り続けたという実績もあります。


反対に、中村憲剛は元々そういうタイプではない上に

御歳36歳ということで、負担増はデメリットが大きいと見ることができます。

また家長も、右サイドに流れて左足を生かすプレーが目立つと言えますが

前所属の大宮やそれ以前のG大阪時代では、セット時には2トップに位置し

守備の負担を最小限にした上でのサイドに流れるプレーでした。


よって、彼らをサイドに置くことは

攻守のバランスを考えるのであれば、気にすべきリスクでした。

そして、件の並びをプレシーズンから取り組んできたということで

鬼木体制は攻守バランスを重んじると考えるのは自然なことです。


しかし、試合開始5分にして小林と中村を入れ替えたことで

その目算は早合点であったことが判明することとなります。

この最序盤の選手の入れ替えが、川崎の問題点を指し示すカギと言えるでしょう。

この入れ替えには構造的な理由があります。

それは、相手のラインを押し下げる、言わば裏抜け圧力の有無です。

家長と中村憲剛の2トップでは、その圧力に乏しい組み合わせとなってしまいます。

実際に、試合開始直後、つまりチームのコンセプトを出しやすい状況において

家長と中村憲剛は相手の最終ラインから落ちて、味方のパスを受けようとしていました。

しかし、前線2枚のコンビネーションにより裏抜け圧力を加味しなければ

相手DFは、その落ちる動きに付いていくことができてしまいます。

この日の水原は、そうではなかったかもしれませんが

もっと組織されたチームであれば、最終ラインのコントロールで解決してくるでしょう。


川崎としても、相手を押し下げることでスペースを得なければ

いかに、風間体制の長所を受け継いでいたとしても

そのショートパスの精度を発揮することは難しくなってしまいます。


よって、川崎は最序盤にして、小林を2トップに置き裏抜け要員とすることで

発生した問題の解決策としたのでした。

当然、この策は、良くも悪くも攻撃的と言えるものでした。

なぜなら、攻撃の中心であり、かつ走力に乏しい中村憲剛をサイドに置くからです。


中村憲剛をサイドに置いた直後、水原の右WBチャン・ホイクが

川崎の左SB車屋紳太郎との1対1を作り、ドリブルで仕掛けます。

これは車屋が素晴らしいボール奪取を見せますが、水原の狙いはハッキリしました。


水原は攻撃時343の布陣でしたが、序盤の守備では442のような形でした。

従って、低い位置でボールを奪いビルドアップに入る際には

システムチェンジのようなことが起きることになります。


川崎の先制点は、そこにおける水原のビルドアップでのミスからです。

サイドに配された中村憲剛が切り替えの勝負を制してラストパス。

小林も同じく切り替えの速さで相手を置き去りにする、見事なカウンターでした。


切り替えの速さは、戦術的なアンテナの高さを示すものでもあります。

従って、この攻防においては、川崎は攻撃的な策がハマった格好です。


しかし、プレシーズンから取り組んできた布陣を変え

いとも簡単に攻撃的にシフトしたことは

果たして目標達成に向けて相応しい策なのか、疑問が残ります。

川崎の布陣変更後、水原が即座に狙ってきた川崎の左サイドに

この日と同じく中村憲剛を置くのであれば

このあとのACL、さらにはJリーグにおいても、狙われてしまうことでしょう。



攻守のバランスに苦しみ、必要な時に必要なプレーができなかった

もっと言うと、守りたい時に守れなかった前体制からの脱却は叶うのでしょうか。


この脱却とは、チームがボールをもった状態では圧倒的な存在感を出すものの

ボランチでは当たりの弱さが、サイドでは走力が

そしてトップ下でも組み合わせ次第では複合的なデメリットが勝つという中村憲剛を

どこに置くのかという問題と密接な関係を持ちます。

少なくとも、この問題が解決しなければ

つまり、個性的な風間体制を経た川崎がタイトルを獲得するために必要と思われる

例えば広島で森保監督が見せたような、バランスの改善が無ければ

川崎にとっての目標を達成することは難しいのではないでしょうか。

繰り返しになりますが、この日の川崎には、それが見受けられませんでした.

Good!!(50%) Bad!!(50%)

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