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【2017】 J1昇格チームのそれぞれの再チャレンジ ~コンサドーレ札幌・清水エスパルス・セレッソ大阪~ 【J1】

2017/02/24 17:08配信

飯守 友子 (CHANT編集部)

カテゴリ:コラム


シーズン終盤。
J1で歓喜を味わうこととなるのは、リーグの頂点を極めたチームとなるが、J2でも大きな歓喜を手にするチームが在る。

J2からJ1へと 昇格を決めたチーム。
2016シーズンのJ2は、昇格チームが1チームも決まっていない状況で、最終節を迎えた。

僅差の勝ち点差で迎え、自動昇格圏の可能性があったのは3チーム。
それぞれの結果によって、大きく事態が左右される緊張極める最終節を経て、リーグ優勝を決めた コンサドーレ札幌。
はじめての降格から1シーズンで昇格を掴み、J1復帰を決めた清水エスパルス。
この2チームが、自動昇格を手にした。

さらに、4位の位置でプレーオフに進んだセレッソ大阪がプレーオフを制し、3季ぶりのJ1復帰を射止めた。

再びJ1へとチャレンジする、それぞれの道に展望をみたい。

●これまでの昇格とは明らかに違う「クラブ力」北海道コンサドーレ札幌

北海道コンサドーレ札幌にとって、J1の舞台は5年ぶり5度目となる。
これまでのJ1への挑戦の中で、残留することができたのは岡田監督(現・FC今治オーナー)が率いた2001シーズンの一度のみ。当時のキャプテンは現・北海道コンサドーレ札幌社長 野々村芳和氏だった。
レギュレーションの影響を受けて降格した不運な歴史も含めて、これまで何度も降格を繰り返してきた。

これまでの挑戦と同じく目指すはJ1残留・定着ということになるであろうが、今季の昇格はこれまでとは違っていると表現しても良いのではないであろうか。

まずは、クラブとして資金面も含めてJ1で戦う準備が、これまでよりもずっと整ったと感じる。
これまでは、J1昇格を果たしても財政難であることが常、というクラブ事情を抱えてきたが、コンサドーレ札幌は野々村社長就任から積極的に新しい試みを取り入れ、
「お金がない」が常用句のように語られてきたクラブ状況から、お金がないという言い訳をするのではなく、「なければ生む」といった方向に転換し、
新たなスポンサー獲得やサッカーという枠を超えての事業展開、大手広告代理店である博報堂とスポンサー契約ではなくクラブビジネス戦略パートナー提携を結ぶなど、大掛かりな変化と進化を生んできた。

人件費含め、クラブ運営費を数年で数億円単位でプラスするというのは、これまで厳しい状況にあったサッカー界にとって、困難極めることであろう。
特に札幌はJ2で戦ってきただけに、手を組みたいという企業を簡単に見つけることは難しく、相当な営業努力と企業として計画性のある道すじ、舵を取る手腕があったことは想像に難しくない。
チームを強化するための資金を準備するだけでなく、クラブ全体として大きくなることを意識し、J1で戦える「チーム」に重点を置くのではなく、J1で戦える「クラブ」を実現するため、J1昇格の準備をしてきた。
クラブとして、これまでの昇格とは大きく違っているのだ。

J1に上がっても、J1で戦える資金とクラブを支える会社としての土台がしっかりしていないことには、再び降格を繰り返すこととなってしまう。
何度も重ねた降格によって、クラブとして会社として必要なことをひとつひとつ重ね努力を惜しまず、急成長してきたと感じられる。

J2で戦い結果が振るわないシーズンを過ごした時であっても、野々村社長就任からは平均観客数1万人を常に超える動員を維持し、一昨年から続いたホーム負け無し記録は23を重ねた。
サポーターを前に意見交換も行われるようになり、クラブとして目指すもの、クラブとしての取り組みの中身の詳細をフィルター通さず伝え、お互いが進むべき道を理解し、共に歩むことで結束も強めてきた。

今季はこれまでの昇格時よりも、適切でなおかつ戦力として能力の高い補強ができたのでは、という印象を持つ。
北海道という土地柄、遠い北国のクラブへと移籍を決断してもらうには、チャレンジという意識だけを持って移籍を決断する選手は少なく、選手を獲得するには他チームよりも好条件であることはもちろん、交渉術も必要となる。
今季は大きなお金を使ってでも選手を獲得しようとする動きや、これまでは引き抜かれてしまっていた自チームで成長した選手たちの残留にも成功した。
J1でもチームの戦力となるであろう選手たちの残留、そしてJ1経験をしっかりと持つ選手の獲得に成功している。

中でも、横浜Fマリノスから移籍した、兵藤は札幌の核となる候補であることは間違いない。
近年は横浜FM監督の構想を前に、兵藤は出場機会を失い後半から試合の流れを動かすキープレーヤーとして起用されてきた。
後半途中から投入されるジョーカーの役割を担っていた兵藤だが、非常に能力は高く、個性強い選手たちの中に入ってもその選手たちの能力を引き出すことのできるボールを配球し、自らもゴールを狙えるプレーをすることができる選手であった。
ベンチスタートが多い中、トレーニングの中でもキラリと光るセンスを感じさせる動きを常に魅せ続けてきた。
札幌には小野伸二という日本を代表する「魔法使い」が存在するが、またタイプの違った札幌にはなかなか誕生しなかったゲームをコントロールする選手としての活躍が期待される。
J1経験を重ね持つ選手たちをうまく補強し、これまでのJ1への挑戦の補強の中で一番バランスの良い戦力を補強できているのではないかと感じる。

リーグ序盤で、J2では通用した部分が通用しない部分、J1でもやれる部分の見出しを早い段階で見つけ出し、
ステージが上がった場所で戦いながら、即座に経験値として積み重ねチームとして順応することで、次のステップとなる道を見つけることができるのではないであろうか。
場合によっては夏の補強も視野に入れられるクラブ力も、今は充分に備えているはずだ。

J1への5度目の挑戦は、クラブとしての革命と共に進む。


●圧巻した得点力を持って1年でのJ1復帰 清水エスパルス

はじめてのJ2での戦いとなった昨季は、慣れない独自のJ2での戦いと、J1で結果的に降格となった2015シーズンに生じた歯車のズレも影響したか序盤は苦しんだ。
しかし、戦いを重ねるうちにJ1にて戦ってきたことを示す質の違いを現し、爆発的な得点力を持って多くのゴールを重ね、勝利を重ねると同時に順位を上げることに成功。
昨季、圧倒的な85ものゴールを重ねた清水エスパルスは、リーグ終盤9連勝という脅威の追い上げを経て、2位の位置で自動昇格を手にした。

ただ、気になることは昨季のJ2上位であった札幌、そして松本に清水は1勝もすることができなかった、という点だ。
上位に勝利することができなかったが、他チームとの対戦では勝ち点を取り損ねるといった試合は少なく進んできた結果、着実に勝ち点を重ねての昇格となったが、
上位との対決では一歩引いた位置となったことは、忘れてはならない課題のひとつであろう。

そして昨シーズン途中、接触によって受けた複数個所の肋骨骨折と肺挫傷という大けがを負い、長期離脱となってしまいながらも、
29試合に出場し18ゴールを決め、チームの強力な得点力の一角であった大前元紀が大宮アルディージャへと移籍。
清水は昨季J2得点王に輝いた26ゴールを決め、チームの得点源として活躍したチョン・テセをエースとして、J1で戦うこととなる。

J1とJ2では全体の質の違いがあるものの 特にGKと最終ラインを中心とした全体の守備には大きな違いを感じる選手たちが多く、
得点を奪うことはJ2よりも当然難しくなり、より変化と進化が必要となるであろうが、チョン・テセはJリーグ屈指の力強いFWであることは確かだ。
J1のデイフェンダーたちを前に、どんな力強い突破を魅せゴールを生むのかという期待を持つ選手である。

決して同じ間違いを侵すわけにはいかない、とクラブそしてサポーターが肝に銘じているであろうことが伝わる覚悟のJ1復帰。
サッカー王国・静岡を代表するJ1クラブであることが、清水エスパルスには当たり前に求められている。

今季はJ1の舞台で静岡ダービーも、4季ぶりに開催される。どちらのチームもJ2を経験したが、どちらもより強いプライドを持って迎えることになるであろう。
J2での戦いから継続される小林監督のサッカーを熟成し、J1でも得点力を誇るチームとなることに、期待がかかる。


●セレッソで育ち成長してきた選手たちが強力な戦力となり揃う セレッソ大阪

J2へと降格し、1年でのJ1復帰を目指したセレッソ大阪だったが、一昨年はプレーオフの決勝まで進みながらも、レギュレーション上必要だった勝利を得ることはできす、降格に続き悔しい経験をまたひとつ重ねた。
1年でのJ1復帰はならず、J2にて2年目のシーズンを迎えるという厳しい現実が降りかかった。

スイスから柿谷曜一朗が、J1川崎にチャレンジしていた杉本健勇が復帰となったと昨季、日本代表・山口蛍が海外へと挑戦。
だが、その山口もシーズン中には復帰するなど、J2という枠を超えたサッカー界屈指の能力高き選手たちを起用しながら、昨季は戦ってきた。
しかし、思うように勝ち点を伸ばせなかったシーズンであったことは確かだったはずだ。

プレーオフにて念願の昇格を決め、J1へと3年ぶりとなる復帰を決めたヤンマースタジアムは桜満開となった。
そして3季ぶりのJ1昇格を前に、セレッソ大阪には新たに大きな大きな戦力が加わった。
今オフ一番の大型移籍といって良いであろう、大きく話題となった日本代表・清武弘嗣の復帰だ。

柿谷、山口そして清武も揃い、昨季チーム内得点王の杉本や多くのJ2選手が対戦して印象に残った選手として名を挙げるソウザを要し、韓国代表GKキム・ジンヒョン等、ビッグネームたちが揃う。
J2からの昇格チームとは思えない選手の名がずらりと並ぶが、決して忘れてはいけないのは昨季「J2で4位だった」ということであろう。

プレーオフ導入後、プレーオフ枠にて昇格したチームは1年で降格という結果に喫している。
ジンクスのようになっているが、この事実を見つめると、J2で自動昇格圏に入ることさえできなかったチームはJ1で戦うことが難しく厳しいということの現れだ。

これまでにプレーオフにて勝ち上がり、J1へと挑戦したチームと比較すると、クラブ規模・資金力・選手の個と大きな違いを持つセレッソ大阪。
ただし、それでもJ2へと降格してしまったこと、そしてJ2で自動昇格圏内に入れなかったという辿ってきた道を真摯に振り返り、見つめることも必要となるであろう。
この続く、ジンクスのように語られる厳しい結果の歴史は、決してこの先も続いてはならない結果であるからこそ、Jリーグを代表する戦力を揃えJ1をさらに活性化させるであろうセレッソ大阪が歴史を変えることに期待がかかる。

降格時に抱いた大きな悔しさ。必ず戻ってくると誓った、あの日。
J1で戦うことだけを目標とし満足するクラブ規模ではないはずだ。

目指すはひとつでも上の順位。

J1というステージに再び旋風を巻き起こし、主役の一角となることが求められる。

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