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サッカーの異文化交流とオリジナリティの話

2017/02/23 21:06配信

武蔵

カテゴリ:コラム

今年、学生駅伝3冠と箱根駅伝3連覇を達成したのは青山学院大学です。

その指導者である原晋監督の武器は

今までの陸上界で常識とされてきた概念を取り払う力である、と言えます。


例えば、有名なのは体幹トレーニングです。

大学生ともなれば、行える筋力トレーニングの幅も広がるのですが

従来では、腹筋や背筋はともかく、腕立て伏せなどが主流でした。


走ってみると分かるのですが、長距離走に大胸筋は、ほとんど必要ありません。

むしろ、有りすぎると揺れて邪魔になります。


原監督は、運動生理学士の中野ジェームズ修一氏を招き

体幹トレなどにより、本当に長距離走に必要な筋力を付けさせ

学生の競争能力アップへと繋げました。


また、学生とのコミュニケーション能力の高さも強みと言えます。

成人も混じるとはいえ、まだまだナイーブである学生相手に

密なコミュニケーションを取ることにより、コンディションを把握することで

大会本番でのパフォーマンス向上に繋げています。

これは、以前に勤めた自身の営業マンとしての経験が生きていると言います。

原監督が言うには、選手にとって必要なのは自立することであり

監督も含め、陸上以外の様々な分野の専門家と交流し、色々な知識を吸収することで

結果として、そのどれにも依存することなく、自立することができる、とのことです。


原監督が打ち出すメソッドは、どれも革新的なものばかりですが

「革新的」という言葉がオリジナルであることを指すのであれば

自分の専門外である分野の知識を吸収することによって

自分の専門分野でインスピレーションを発揮するという

オリジナリティというものが拡散、共有、摩耗しやすく

未踏の地が少なくなった現代におけるオリジナリティの概念に当てはまるものです。

専門外からの吸収や異文化との交流は、オリジナリティであることに繋がり

それは、その競技の進歩へと繋がります。


では、これが現在の日本サッカー界にあるでしょうか。

無いとすれば、この界隈における有効なオリジナリティの存在に疑問符が付きます。

また、この手の異文化交流を起こせないものでしょうか。

欧州サッカー界には存在する、サッカーの異文化交流

日本にこの手の異文化交流が無いと決まったわけでは、まだありません。

ただ、海外のサッカー界にはいくつか見受けられます。


ジョゼ・モウリーニョが通訳、その前は体育教師であったことは有名な話です。

ナポリのマウリシオ・サッリは元銀行マンです。

選手との対話能力の高さにより、戦術の浸透が早いことに定評があります。


ジョゼップ・グアルディオラは名選手であり、指導者としてのキャリアを含めても

そのほとんどはカンプノウ周辺におけるものです。

しかし、彼の右腕であるマネル・エスティアルテは、スペイン水球界のレジェンドです。

エースとして臨んだアトランタ五輪では金メダルを獲得しました。

現役時代にグアルディオラと親交を持ち、強く影響を受け

ひいてはプレースタイルを変えるまでになったことがきっかけで麾下に入り

以降、補佐役としてバルセロナ、バイエルン、マンチェスターと移り住みました。

もちろん、彼らは相互補完の関係と言えます。


日本が目指すべき欧州の、中でも最高ランクのサッカー指導者は

既に自らの経験も含めた、サッカーの異文化交流を進めているようです。

日本では、そのような異文化交流は存在するのでしょうか。

異文化交流の例を挙げてみる


「ディシプリンの権化」と表現されたのは白州次郎ですが

日本サッカー界には、そのディシプリンが存在しないようです。

ディシプリンとは、日本ではしばしば「規律」と訳されますが

ここでは、ルールの次、そしてチームのプレーモデルより先に共有されるべき

試合で勝つための「規範」と定義付けたいと思います。



その代表例が、先のブラジルW杯で決定的に明らかとなった守備の問題です。

戦後、サッカーライターの鈴木康浩氏や宮崎隆司氏

あるいは、実績ある指導者である松田浩氏などにより分析されましたが

欧州基準のゾーンディフェンスができていなかったことがその中身でした。

日本代表は、効率の悪い守備を強いられるだけに

目指すべき欧州や南米との試合は、ハンデ戦となってしまうと言うことができます。


例えばこのゾーンディフェンス、欧州ではプレーモデル以前の話

つまり、ハンドリングやオフサイドなど、ルールの次に必要となっているものです。

サッカーの組織的な守備に際しての

常識レベルでの共通理解として選手に刷り込まれているものです。

日本代表監督に限らず、来日する多くの外国人指導者は、この労苦に苛まれてきました。


日本代表への、欧州基準のゾーンディフェンスの導入は

これまでザッケローニ元監督が挫折し

ハリルホジッチ現監督が基礎から始めたり、というのが現状です。

この後れは、育成の問題であり、ひいては日本サッカー界の問題と言え

この国のサッカーには、共有されて然るべき規範が無いということになります。



では、どうすれば、例えばこの守備の規範は共有されるのでしょうか。

ここで1つ、少しだけ異文化交流をしてみましょう。


組織にとって、その規範が必要かどうかを決めるのは

「普遍的な価値を追求できるかどうか」にあります。

普遍的な価値を追求できるのであれば、その規範は組織にとって必要なものと言えます。

普遍的な価値とは、正当性の説明を完全にできるもののことであり

平たくサッカーでいえば、それが勝つために必要なものであるかどうかとなります。

そして、日本代表におけるゾーンディフェンスの必要性は

ブラジルW杯の結果と、その後の分析で散々に示されました。

ゾーンディフェンスは日本にとって必要な規範であり、早急に共有されねばなりません。


この考えた方は、法学のものです。

今回は、少しの異文化交流で、1つの規範の必要性を説くことができました。

必要は発明の母というとおり、必要性を説くことで浸透することもあるでしょう。


日本サッカー界にも、異文化交流が必要と考えます。

望ましい異文化交流を経た人物が

日本サッカー界にオリジナリティ、進歩をもたらすのではないでしょうか。

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