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バルサのサイクル終焉を示す、サッキの言葉

2017/02/21 19:48配信

武蔵

カテゴリ:コラム

欧州チャンピオンズリーグ(以下CL)はラウンド16が行われていますが

その中で少々、センセーショナルな事が起きました。

それは、あのFCバルセロナがPSGとの1stレグに0‐4と敗れたのです。

2ndレグ、カンプ・ノウでのリターンマッチに、突破の可能性を残してはいますが

2シーズンぶりのCL制覇は厳しくなったと言わざるを得ません。

そして、そのタイトルをもたらしたルイス・エンリケ体制の危機です。

CL早期敗退でバルサに訪れる危機

欧州のビッグクラブはいずれも

放映権料による分配金を含めたCLの莫大な賞金を、その予算に当て込んでいます。


例えば昨シーズンのCLを制したレアル・マドリーは

約740億円の年間予算を組んでいますが

そのCLで勝ち得た賞金は、約91億円にも上ります。

これは年間予算の12%強となる数字です。

もしこれがラウンド16での敗退となれば、賞金は30億円ほど減少します。

年間予算の8%ほどに落ち込むこととなります。


ここまでが単純な被害の話です。

つまり、このように「被害総額」で表すことのできない損害があるということです。


クラブビジネスとは、自らのブランド力でもっています。

クラブのブランド力により、全世界でサポーターを増やし

その数字を盾にスポンサーを獲得し、放映権料を獲得し、予算とします。


放映権料が一括管理となったリーガ・エスパニョーラにおいても

依然として随一の放映権料を獲得しているのがバルセロナです。

それもこれも、バルセロナのサポーターが全世界に居るということが言えます。

来シーズンからは楽天がバルセロナの「胸スポ」になり

年間65億円をつぎ込むことも、その裏付けとなることでしょう。

そして、そのブランド力を支えるのは、強さです。

言いかえれば結果です。

それは、世界で最も魅力的なサッカーをすると言われるバルセロナにおいてもそうです。

なぜなら、魅力的とは主観で、結果は客観であるからです。

そういう意味では、ブランド力とは説得力である、と言えるかもしれません。



その説得力を獲得するためには最上と言える舞台がCLです。

ここで優勝できなければ、そのブランドに影が差してしまいかねません。

まして、ベスト16で誰が納得してくれるのでしょうか。

だからこその、バルセロナの危機と言えます。

バルサはこの頃、アリゴ・サッキに「死した王」とまで言われてしまいましたが

このようなことを言わせていてはいけないのです。

そのためには、この危機に立ち向かわなくてはなりません。

そして、そのためには、この危機を把握する必要があります。

サッキの指す「バルサ」とは

そのサッキは同じ口で、昨今のバルセロナについて

「少し前からバルサはバルサでなくなった」としながらも

「10年に渡って世界中に教えを説いてきた」としました。

辛口を通り越して時に辛辣なサッキをして、一定の評価をされています。


興味深いのは、このサッキの2つの言葉をよくよく考えてみると

FCバルセロナの危機の現状を垣間見ることができそうである、ということです。



この「10年」という数字が指すのは、とある出発点であり

つまり08‐09シーズンから監督を務めサッカー史に残る成功を収めた

ジョゼップ・グアルディオラの時代からということになるでしょうか。


で、あれば、挙げなければならないのはポジショナルプレーです。

選手のポジショニングにより優位性を獲得するというこのプレー原則は

グアルディオラが発展させ、当代随一の使い手となっています。

これによって、バルセロナとバイエルンでの成功を手にしたと言えるでしょう。


ただ、発展させた、という表現は

発明した人物と、それを継承し、グアルディオラの元へ届けた人物を示唆します。

それがリヌス・ミケルスでありヨハン・クライフであり

ルイ・ファン・ハールということになります。

この、同じ母国を持ち、師弟関係、あるいは兄弟弟子と言える関係でもあり

そして、同じくバルサで監督を務めた経験を持つ彼らによって

ポジショナルプレーは、グアルディオラを飛び越え、バルサに深く根付いているのです。


グアルディオラ期のバルセロナの強さを、頑張って一言で言い表すならば

ポジショナルプレーという優れたプレー原則を発展させた指導者と

それを忠実に表現した上で素晴らしい個性を出す選手たちが集った結果と言えます。


サッキの言う「10年」とは、バルサに根付いた、この土壌なくしてあり得ないもので

むしろ、この土壌そのものを指す、と言っても良いかもしれません。

バルサの成功、それをもたらしたグアルディオラ

そしてバルサが世界中に教えを説くことができたのは

ポジショナルプレーというプレー原則の存在のおかげと言えます。


このポジショナルプレーがバルサの土壌であり

これが優れた運用をされる限り「バルサはバルサ」と言われ続けたことでしょう。

しかし、ある悲劇によって「バルサはバルサ」でなくなりかねない事態となるのです。

ルイス・エンリケのサイクルは苦渋の選択の産物

「3年が限度」と話すグアルディオラが4シーズン務めたのち

後任を負ったのは、その副官のティト・ビラノバでした。

革新的であり、やや急進に過ぎるグアルディオラのチームを

バルサの土壌を生かしながらソフトランディングさせることが彼の役割でした。

それは、グアルディオラほどのカリスマでなくとも

自身もバルサの下部組織で育ち、5年に渡りバルサでコーチを務めたビラノバが

誰を置いても適任である、と言えるものでした。


そして、ビラノバが病に倒れ、その計画は破綻します。


プレシーズンのさ中、バルセロナは急遽、タタ・マルティーノを招聘しますが

急場凌ぎの感は拭えず、翌シーズンは3冠タイトルを全て逃し

彼の2年契約は全うされずに終わりました。

バルサにとって無冠は6シーズンぶりであり

それはグアルディオラ就任直前のシーズン以来のことでした。

ここにバルサは危機を迎えました。

バルサの土壌であるポジショナルプレーの使い手が相次いで退場したことで

ポジショナルプレーが、結果を出すための最短ルートではなくなったのです。

つまり、長く根付いた土壌とは距離を取り

なりふり構わずに結果を求める戦術への転換が求められたのです。

グアルディオラで掴んだ栄光と名声のことを考えると、苦渋の選択と言えます。



ここに、ローマでトッティのゼロトップを基調としたパスサッカーを展開し

それをイタリアナイズさせ、縦に速い攻撃を融合させた指導者であり

バルサのレジェンドでもあるルイス・エンリケを招聘したのは

今から考えてみても、悪い選択ではありませんでした。


ルイス・エンリケ体制は、ルイス・スアレスの獲得により形成された

前年に獲得したネイマール、王様メッシとのMSNと呼ばれる3トップが特徴です。

最初のクラシコで、その3枚の火力でカウンターの打ち合いを制したことが象徴的です。


この年はリーガに加えCL、さらには国王杯も制し、3冠を獲得しました。

世界的に、守備的なサッカーが流行したという背景もありましたが

何よりも、これ以上ない結果を出したことで称賛を勝ち取りました。



しかし、この成功のその要因は、バルサの土壌とは距離がありました。

つまり、短期的成功に特化した戦略であったと言えるでしょう。

当然、そうは長くない賞味期限が存在します。

サッキの「少し前」とは、3冠を制したこの辺りを指すのではないでしょうか?

少なくとも、終わりは始まっていました。


リーガのみならず、CL出場チームが日夜明け暮れる対策の標的となるバルサは

主に、引いた相手を崩さなければなりません。

MSNの火力に比重を置くチームは、その対策も早かったように思えます。

少なくとも、ポジショナルプレーが上手く運んだ際にありがちな

「分かっているけど止められない」

というプレーが、組織的、再現的に行われることは減りました。

そして、バルサの土壌と距離を置き、イニエスタはケガにより稼働率を下げ

その後継者の最有力候補であったラキティッチも、不調で出場機会を減らすようでは

その短期戦略が限界を迎えても仕方のないところです。

PSG戦の1stレグでは、相手の451を崩せずにカウンターを食らい続けました。



ルイス・エンリケを押し立てた、バルサの消極的かつ短期的戦略、そのサイクルは

既に終焉を迎えつつあります。

首位と勝点1差の2位に付けるリーガでの逆転優勝や

ここから挽回してのCL制覇でもない限り、退任となるでしょう。


と、なれば、バルサの次なるサイクルに注目は移ります。

そのサイクルは、バルサに根付く土壌に寄り添ったものなのでしょうか?


もしそうだとしても、先ごろ

「バルセロナに監督として戻ることは絶対にない」と

予防線の感もある発言をしたグアルディオラ以外の選択を採ることになるでしょう。

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