CHANT(チャント) 川崎フロンターレ

天皇杯準々決勝 FC東京vs川崎 「風間川崎 5年間の集大成」

2016/12/26 15:13配信

武蔵

カテゴリ:コラム

天皇杯準々決勝です。

Jリーグ最終節からここまで、チャンピオンシップやクラブワールドカップを経て

1ヶ月半以上の間隔が空いたクラブも数多く存在するという

致し方ないとはいえ、なんとも健全ではない日程ではありますが

だからこそここで負けて、それがムダであったということが無いように

死力を尽くしてこのトーナメントを勝ち抜きたいものです。

FC東京は7月から篠田善之新監督となってからは好調で

篠田体制の平均勝ち点は、実に3位に換算できるものです。

前体制の解任の、直接的な引き金となったのが川崎であり

それだけに、篠田東京としては初のライバル対決・川崎戦ということになります。


ただ、好調を支えたメンバーにケガ人が相次ぎ

河野広貴、橋本拳人を欠き、終盤には主力に返り咲いた梶山陽平も

コンディション不良からベンチスタートとなりました。

逆に徳永悠平は、セカンドステージ第14節の広島戦での負傷以来遠ざかっていた

スターティングメンバーに帰ってきました。

川崎の今年は非常に充実したシーズンとなりました。

しかし、ファーストステージは第16節の福岡戦で取りこぼしての2位

セカンドステージは3位、そして年間順位も2位に終わり

チャンピオンシップも優位な状況で鹿島に敗れました。

従って今のところ、待望のタイトルを手にすることは出来ていません。

川崎を再び強豪へと押し上げた風間八宏監督の退任が決まっている中

このラストチャンスに対して、燃えるものがあることでしょう。


川崎の方は、11月の段階で続出していた中村憲剛、小林悠といったケガ人が

間隔が空いたことで続々と帰ってきました。

ただ、同じく復帰した大島僚太は週中にケガが再発したということで欠場です。

川崎の「ミシャ式」に全く対応できないFC東京

川崎は言うに及ばず、FC東京も直近のリーグ戦ではボールを運べるようになっており

実はボールを持ちたいチームとなっています。

そのために、しっかりとプレッシャーを掛けることで川崎のビルドアップを阻害しつ

相手の攻撃の回数を削り、マイボールの時間を増やしたいところです。


しかし川崎は、全くと言って良いほど

FC東京のプレスを問題にしないビルドアップを見せました。



川崎のビルドアップは415です。

これは、現在の浦和、そして広島で見ることのできる形と同じものです。

3421表記の川崎は、ボランチの片方が最終ラインに落ちて4枚に

WBが高い位置で横幅を取り、5トップ気味になりました。


3バック自体は、ケガ人が続出したことで転換した

11月のCS準決勝鹿島戦や、天皇杯4回戦浦和戦と変わりません。

ただ、その中身は大きな変貌を遂げていました。

これで起きることは、日頃Jリーグ各クラブが浦和や広島相手に

頭を悩まされることと同じことです。

442で守る場合、相手の4枚に対して2枚で対峙することとなり

数的不利が、プレッシャーを掛けるにあたって絶望的な2枚差となります。

そして、451~541変形でも見せなければ中盤は置き去りにされ

最終ラインの4枚は相手の5トップに対して数的不利となります。


前半6分、右WBのエウシーニョが相手左SBの徳永の裏を取り、決定機。

これは左足でのフィニッシュとなり、打ち上げてしまいましたが

理屈通りに、ボールの出どころを制限できず

フィニッシュのところでは間に合わない、という状態が発生します。



これに対して、FC東京の対応は非常にオーソドックスなもので

つまり、大外を捨てるというものでした。

前線のプレッシャーでサイドに追い込み、スライドを速くして封鎖

捨てた大外を使わせないとするものでした。


これにより、少し落ち着きを見せたFC東京は

前半12分にはコーナーキックのチャンスを作り

その流れから中島翔哉が、この試合初めてのシュートまで行き

直後には早くも2本目まで打ちました。

ただ、FC東京には問題がありました。

それは、ストロングポイントであるビルドアップに関することです。

前線で奪えないため、ここまでの攻撃は低い位置からの開始となりました。

普段のFC東京であれば、それは悪い選択肢ではありません。

ただ、この日は技術のある2CBとともに起点となる梶山と

ハーフスペースにサイドに動きまわり、縦パスを引き出す河野がいないことで

ボールをうまく前線へと運べませんでした。


そして最大の問題点は左SBの徳永です。

FC東京は相手を引き伸ばすための横幅を主にSBが受け持ちます。

そして、そのために高い位置を取り、攻撃の際にクロスまで持ち込む必要があります。

しかし、この日の徳永は、攻撃の際でも高い位置まで出て行けず

左サイドでクロスを上げるチャンスに際しても、切り替えしてやり直すなど

チームに必要なプレーができませんでした。

これによりFC東京は、特に左サイドにおいて相手に脅威を与えられず

血液が滞ったような状態と言えました。



川崎の先制点は、FC東京の捨てた大外を使ってのものです。

川崎は、FC東京を左サイドに寄せたあとに展開してエドゥアルドへ。

守備のチェーンの甘い中島と田邉草民の間を通して

絞ったエウシーニョと高い位置を取っていた中村憲剛がワンタッチで繋ぎ、中外。

捨てられた大外に進出した田坂祐介は、得点者の大久保と

タイミングを示し合わせてからクロスを上げる程度の時間を持っていました。


大外を捨てたことで落ち着いたFC東京としては

そこを使われての失点ということで、戦術的に仕方がないと言える失点でした。

ただ、デュエルの手前で中途半端な対応をしてクロスを上げさせてしまった徳永と

クロス対応で後れを取った室屋成の、個人の面では悔いが残る失点と言えました。


直後の追加点はカウンターからということで

川崎は遅攻、速攻ともに高いレベルのものを見せたと言えます。

もう2つだけ付け加えるとすれば

このカウンターは丸山祐市の無理めなパスをカットされてのものであり

素直にボランチを経由していれば、存在しなかった被決定機です。

そして、梶山がいれば存在しなかった不安定さとも言えるでしょう。

そしてもう1つ、エウシーニョの左足でのフィニッシュは、この日2回目でした。



川崎がFC東京にほぼ何もさせず前半を2‐0で折り返しました。

FC東京サポーターからブーイングが起こるのも、仕方のないことでした。

巧さが出てきた川崎はタイトルを獲れるか

FC東京は後半頭から、徳永に代えて小川諒也を投入しました。

左利きで、フィジカルはJ1でも通用するものを持っている高卒2年目のSBです。

日によってバラつくキックの精度も、この日は非常に冴えていたことで

このゲーム自体のバランスが、是正されたものとなりました。

後半立ち上がりの小川のクロスは惜しくも合いませんでしたが

FC東京が持ち味のビルドアップを、この日初めて生かしたと言える場面でした。


このあともセットプレーやカウンターなど

FC東京がチャンスを作る場面が続きましたが得点には至らず。

この辺りで目立ったのは、川崎の巧さでした。


川崎は5バック気味に守り、しっかりとゴール前を固め

低い位置で奪った際には1トップの大久保の巧みな位置取りと

2列目の素早いフォローによりカウンターを発動させ

とにかくFC東京ゴール前までボールを運べていました。

それにより、川崎は最終ラインを回復させることができますし

FC東京も守備に戻らざるを得ず、時間も経過するため非常に有効なプレーでした。


これは、目の前の1試合、トーナメントを勝ち取るには非常に重要であり

ゴールに迫れる分、いわゆる「鹿島る」ことよりも有効と言うこともできます。

実際に、大久保のミドルシュートはポストを叩きましたし

エウシーニョや小林悠がそれぞれ決定機を演出しました。

3点目を取れば試合が終わるという思想は誰もが抱くもので

今の川崎はそれを成し遂げるだけの技術とシステムを手にしています。


試合後の風間監督の「ゲームをコントロールできた」というのは

主に後半のこの部分のことを差すものと思われます。



とはいえ、川崎のタイトル獲りに向けた課題も見受けられました。

カウンターから迎えた水沼宏太のシュートはバーを叩き

コーナーキックから繋がれ、前田遼一の決定機となった場面も

クリアがエドゥアルドの手に当たった場面も作られました。


そして、後半ATには小川のフリーキックから平山相太に押し込まれました。

この場面、90分を過ぎ、体力的に厳しい場面なのは分かりますが

平山相太も完全にフリーですし、ニアでは高橋秀人もフリーとなっています。

この試合は2‐1で川崎が逃げ切ったものの

前半の内容や、後半のカウンターの機会からして

3点目はもちろん、5点6点と入ってもおかしくない内容であったにもかかわらず

最後の2~3分は冷や冷やした展開となってしまったことは

川崎のタイトル獲りにとって、文字通り最後の関門と言えるでしょう。



とはいえ、この日の川崎は、圧倒的な内容でFC東京を下したと言えました。

「ミシャ式」という表現はしましたが

サイドで詰まった時のフォローなど、オリジナリティも見受けられました。

そして、今季浦和に4敗、10月の広島戦でも劣勢であったFC東京が

最も嫌がることを行い、攻略を試みた結果としての415であったとすれば

それは、2012年4月からの積み重ねの賜物であり、引き出しと言えます。


風間川崎は、その5年間の集大成であるこの天皇杯を制することはできるのでしょうか。

それは分かりませんし、確かに不安材料も存在しますが

この日の川崎は、その宿願を成し遂げてもおかしくないものを見せました。

Good!!(100%) Bad!!(0%)

この記事も読んでみる