CHANT(チャント) 川崎フロンターレ

チャンピオンシップ 川崎vs鹿島 「タイトルのための『作業』」

2016/11/24 19:33配信

武蔵

カテゴリ:コラム

長きに渡った2016年のJ1リーグも、いよいよ大詰めとなっています。

今年で最後となるチャンピオンシップを制して年間王者に輝くのは

いったいどのクラブなのでしょうか。


年間勝ち点1位の浦和をシードとして、準決勝は川崎と鹿島が

年間勝ち点で上位の川崎のホーム・等々力陸上競技場で激突しました。

今年のレギュレーションでは、90分を終えて同点の場合

上位の川崎がチャンピオンシップ決勝に進出します。



ケガ人続出の川崎は、小林悠、大島僚太、奈良竜樹などが欠場で

中村憲剛もケガの影響でベンチスタートとなっています。

川崎はボランチ経由のビルドアップ、ボール保持と中央突破に持ち味があり

その中央の主力を欠くことがどのように影響をするのかが注目です。


鹿島も柴崎岳を欠きます。

しかし、こちらはオマーン戦で日本代表初出場を飾った永木亮太や

徐々にフィットを見せるファブリシオや、ケガから復帰の遠藤康がおり

また、ボール保持が持ち味の川崎相手に採るであろう戦術のことも考えると

そこまでの影響は無いものと思われました。

前半が鹿島ペースになった、川崎側の理由

その鹿島が採ると思われていた、そして実際に採ってきた戦術とは

前からのプレス、いわゆる前プレというものです。

ボールを保持した川崎を放っておくと

川崎の良いようにボールを運ばれてしまうため

それを防ぐために、少々効率を無視してでもボールを追いかけることとなります。

そのために、鹿島には走力が必要となってきます。



川崎は3412のような形でビルドアップを開始します。

守備時は3421~541のような形なのですが

攻撃時には前3枚のうち、大久保嘉人が頻繁にトップ下の役割を負いました。

やはり川崎といえば、ボランチ経由の中→中が特徴のチームと言え

中心選手を真ん中に置いておきたいと言う意図があったでしょうか。

ただ、これは天皇杯4回戦の浦和戦でも試されており

ケガ人が続出した中でのやり繰りの一環とは言えるでしょうが

ぶっつけ本番というものではありませんでした。

これに対して、鹿島は442で前プレを仕掛けてきます。

川崎はGKも含めれば2枚の余裕があるのですが

大島、中村憲剛がいないこと、風間体制下では外→外のビルドアップが拙いことで

442の急所を起点としたボールを運びができず

立ち上がりには低い位置でボールを奪われ、ピンチを作りました。


ただ、川崎もその流れで与えたCKからのロングカウンターで応戦し

三好康児の時間を作りつつ相手の視野をリセットするサイドチェンジから

長谷川竜也の大外へのクロス、大久保の決定機を作りました。

4年半以上にも渡る風間体制において

こういった武器も示し、引き出しが増えていることを見せました。


しかし、前半21分に長谷川が負傷し、中村憲剛が投入されたことから

次第に様相が変わっていきます。


川崎は4バックへと変更し、守備時は中村憲剛が前に出る442となりました。

ボール保持時には、複雑に形を変えていましたが

エドゥアルド・ネットがアンカーの4141というのが近い形と言えるでしょうか。


これは、川崎がスタートから3バックとすることで

主力不在の中でもビルドアップを安定化させることを目論んだのですが

中村憲剛の早期投入により、その必要性が薄れたというところでしょう。

ただ、大島がいないため、結局は中村憲剛が頻繁に下がってきており

時にはサイドバックの裏に落ちたりしていました。


また、ボランチからインサイドハーフの位置まで進出することになった板倉滉が

それほど攻撃的な選手ではないことや

この時間になると、鹿島がしっかりと引いてブロックを作ったことなどもあって

川崎としては、前線の枚数、攻撃の手数が足りなくなるという

デメリットも引き起こしていました。

前半の終了間際には、ビルドアップの際にエドゥアルド・ネットが

この日、球際で存在感を出していたファブリシオにボールを奪われ、それを倒し

フリーキックを与えてしまう場面がありました。


前半は、川崎の攻撃が上手く回らないところが目立ちました。

鹿島が前プレと守備ブロックを上手く使い分けたこともありましたが

基本的には、川崎主体での鹿島のペースと言えるものでした。

タイトルを獲るために必要な「作業」

後半立ち上がり、鹿島が先制します。

これは、鹿島の敵陣深くでのスローインで、土居聖真がボールサイドに寄っていき

それにマンマークで右CBの谷口彰悟が付いていくことで

谷口がいるべき場所がスペースとして空いてしまいました。


ゴール前でスペースを空けてしまうと

この場合では谷口が自分のマークを受け渡して復元するか

誰かがカバーリングとして埋めるか

ゾーンディフェンス的に、守備者がそのスペースへ出させないための動きをしない限り

攻撃側に使われてしまいます。


山本脩斗が2人をかわして、そのスペースにクロスを送ったことと

左CBエドゥアルドに対して、金崎夢生が質的優位を生んだことは見事でしたが

川崎の落ち度も決して少なくないと言えるゴールでした。



これで鹿島が0.5点のリードをしたことになります。

川崎は同点であれば勝ち抜けなのですから、俄然、攻勢に出ます。

59分の場面は、先ほど中村憲剛がビルドアップに参加することで

前線の枚数が足りなくなるということを書きましたが

サイドハーフの三好がその役割を負い、中に位置する中村憲剛が前線に居たために

生まれた決定機でしたが、枠を捉えられませんでした。


鹿島は苦しい時間帯が続きました。

温存しながらも前プレを基調としていたため、スタミナ切れを起こしつつあり

川崎のビルドアップを阻害できなくなりつつありました。

また、低い位置で奪った際の、前線の動き出しに乏しいためにボールを運べず

押し込まれる状態が長く続きました。


例えば、ファブリシオがかつて在籍したカイオであれば

サイドで起点となり、単独ででもボールを運べたのでしょうが言っても詮無いことです。



しかし、中を固める鹿島に対し、川崎はそれを引き出す手立てに乏しいと言えます。

例えば70分、広大なサイドのスペースでボールを持った車屋紳太郎が

相手の密集へ向かってドリブルを開始して

登里享平に繋いでシュートまでいくという場面がありましたが

川崎にとって良い距離感というのは、味方同士でショートパスを繋げ得るものであり

それは相手にとって守りやすいものだったかもしれません。

少なくともそれは、相手に嫌がられるプレー選択ではなく

自分たちの好むプレー選択であったと言えるでしょう。

しかし、タイトルを獲るためには

時には好きでもない、言うなれば作業めいたプレー選択が必要なのかもしれません。


そうこうしているうちに、石井正忠監督が策を講じます。

この試合の転機となったのは鹿島の交代策でしょう。

75分、ファブリシオに代えて三竿健斗を投入しました。

これにより三竿をボランチ、永木を右SH、遠藤康がトップ下、土居が左SHに。

フレッシュで、ボランチとしてバランスの取れた三竿を中盤の底に置き

永木と土居の走力のある2人をサイドに置いて攻守の運動量を確保

そして、下半身の強さと技術を基にしたキープ力がある遠藤康を中央に置くことで

ボールの収めどころを作ったという次第です。

これにより、劣勢だった鹿島がボールを前進させられるようになり

次第に、一方的な試合展開ではなくなっていきました。

ボールを前進させることができると、守備陣にも時間ができますので

ラインを調整し、守備陣形もセットしやすくなるという利点があります。

鹿島は徐々に安定を取り戻していきました。

そして、百戦錬磨の鹿島が安定を取り戻すということは

そのリードが揺らがない、ということとも言えました。

最後は、天皇杯4回戦の浦和戦では上手くいったものの

基本的には慣れないパワープレーで攻めかかる川崎に対して

鹿島は赤崎秀平を投入してカウンターを狙うとともに出どころを抑え

次いで植田直通を投入し、そのロングボールを跳ね返す「作業」に入りました。


その作業は、実に淡々としたものでしたが、日曜日の札幌と金沢の試合にように

何かを勝ち取るためには、そういった引き出しも必要となるのが

サッカーというものなのでしょう。

川崎に足りないものがあるとすれば、まさにそこでした。

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